旧形式の問題が多く含まれた改訂版だが、今でも問題無く使える
今回は特急シリーズの中で、TOEICのパート1と2(リスニング)を扱っている問題集をやったのでレビューをします。前回、「TOEIC パート3・4特急&Ⅱ」のレビューをした時に詳しく書いたのですが、特急シリーズにはTOEICの旧形式の問題がたくさん含まれています。
具体的に言うと、2016年にTOEICが新形式になったタイミングで、過去の書籍が改訂され「新形式対応版」として「(再)新発売」されているケースが多いです。今回レビューする2冊の本も、同様の理由で改訂がされています。
1冊目、2017年発行の「TOEIC L&R TEST パート1・2特急 難化対策ドリル」には、225問の問題が収録されています。そのうち、200問(part1:50問+part2:150問)は旧形式の本と内容が全く同じのようです。そこに、新形式対応としてpart2の25問が追加されて、計225問の改訂版となっています。
2冊目、2018年発行の「TOEICR L&R TEST パート1・2特急Ⅱ 出る問 難問240」には、表題通り240問の問題が収録されています。こちらは旧形式の問題を200問から190問(part1:40問+part2:150問)に減らした上に、新形式対応としてpart2の50問を追加した改訂版になっています。
という事で、割合で考えると80~90%は、旧形式の問題がそのまま再利用されています。ただ、私が問題をすべて解いてみた所、旧形式と新形式の違いは特に感じませんでした。ですので、学習者は、問題がリサイクルされている事は気にしなくて良いと思います。
むしろ気にするべきなのは、問題の難易度の方です。この2冊は難問問題集と作られています。ですので、現在のTOEICのpart1とpart2の問題より難易度が上です。私は旧形式と新形式の違いは分からなかったのですが、難易度の高さは、はっきりと感じました。
全体的に問題の質はとても良いです。ただ、難易度の高さには注意が必要です。現在のレベルに対して難しすぎる問題をやると、解説を読んでもその意味が理解出来ないときがあります。すると、ストレスが大きくなって、学習の効率も悪くなりやすいです(私の経験上)。
ということで、この2冊をおすすめできる学習者は、現在800点以上取っている方ぐらいになると思います。初中級者の方は、まずは公式問題集に出てくるような、基本的な問題をストレスなく解けるようになってから、この本に取り組むことをおすすめします。
どのように難しいのか(難易度の上げ方に少し特徴がある)
私の正解率は以下のようになっています。
TOEIC L&R TEST パート1・2特急 難化対策ドリル(2017年発行)
全225問中 17ミス 正解率 92%
TOEICR L&R TEST パート1・2特急Ⅱ 出る問 難問240(2018年発行)
全240問中 24ミス 正解率 90%
TOEIC本番での私のリスニングの正解率が、最近はだいたい95~97%となっています。ですので、この問題集が本試験より難しいことが正解率からも分かります。加えて、今回の2冊には、他のpart1・2を扱っている難問問題集と比べて、やや特徴的な難しさがあると感じました。
part2では「受け答えに距離のある問題」が扱われる事が多い
例えば以前レビューをした、「ウルフ模試」のpart2では、受け答えに距離のある問題がたくさん含まれていました。
受け答えに距離のある問題とはつまり、
質問:昨日、会議で何が決まったのですか?
答え:私は昨日、出張で会社にいませんでした。
という感じの問題です。何が? と聞かれている状況で「会社にいなかった(ので、何が決まったのかを知りません)」と答えています。この(ので、何が決まったのかを知りません)の部分は、解答者の我々が推測しなければなりません。この「推測しなければならない省略部分」を「受け答えの距離」と私は呼んでいます。
実際、最近のTOEICで、上記のような距離のある問題が増えているような気がします。これらの問題はある程度慣れが必要ですし、推測の為の想像力が求められます。ですので、難問問題集のpart2には、同様の問題が含まれることが多いです。
難易度の高い単語・慣用表現が多めに使われている印象
今回の問題集2冊はやや発行が古い本ですが、この距離のある問題も含まれています。ただ、そこまで目立つ感じではありません。それよりも、リスニング問題としては難易度の高い単語や、慣用表現を増やすことで、難易度を上げている印象を受けました。
個人的に、この難易度の上げ方は非常に良いと思いました。なぜなら、TOEIC本番のpart1でちょっとややこしい表現が出て、戸惑うことが結構あります。part2でも、短い音声の中に熟語や難単語が含まれると、意味の把握に苦労をしがちです。その対策を、この2冊ですることが出来ると感じました。
また、part1で「進行形の受動態」が多めに含まれているのも良かったです。具体的には、
①The box is being put on a shelf.(箱が棚に置かれているところだ)
②The box has been put on a shelf.(箱が棚に(既に)置かれている)
ここでは「is being」と「has been」の聞き分けが求められています。
(実際に混同しやすいのだが)これらを混同してしまうと、①と②のどちらの意味なのかが分からなくなります。①の場合は、「人がまさに箱を棚に置いている場面(手に持って棚に置こうとしている)」ならば正解です。②は「箱が既に棚に置かれている場面」ならば正解です。この手の問題は本番で結構出るのですが、難易度はかなり高めです。
この違いを見極めるためには、同様の問題を大量に解く必要があります。そしてpart1で「受動態の進行形」が出た瞬間に「例のやつが出た!」とすぐに反応出来るぐらいが理想です。以前レビューをした「TOEIC L&Rテスト990点攻略」でも、この進行形の受動態について、詳しい解説がありました。
上記の本は990点満点を目指すための本ですので、難易度はかなり高いです。つまり、同様の事を重点的に扱っている今回の2冊も、かなり難易度が高いと言えると思います。
他には、part2で時制に気を配る必要のある問題があって、これは本番ではなかなか出ないと思います。ただ、そこまで細かく聞くことが出来るなら、part2の点数を落としにくくなるはずです。一瞬で時制を把握するのは難しいですが、(TOEICにあまり出ないとしても)英語力を上げる意味では、かなり取り組む価値のある部分だと思いました。
と言う感じで、難易度は高いですが、質の高い問題が揃っています。先ほども述べましたが、初中級者の方が取り組むのは、結構キツイと思います。一方で、上級者の方は点数を上げるために、良い訓練が出来るはずです。
難易度が高いが、TOEICっぽさを外していないのが凄い
私は今まで難問問題集を結構やってきましたが、TOEICの出題傾向に沿った上で、難易度を上げるのはかなり難しい事のようです。ですが、今回の2冊は難易度を上げつつも、TOEICの雰囲気を上手く維持していると感じました(素晴らしい)。
「この単語・慣用表現は滅多に出ないだろうな」と思う事もありましたが、問題を解いていて、そこまで違和感は感じませんでした。むしろ「万が一出るかもしれない」というギリギリのラインを感じたので、勉強のし甲斐がありました。
リスニングの音声は基本的にクリアで、極端な圧縮・短縮・訛りもほとんどありません。そういう意味でもTOEIC本番に近い印象でしたので、かなりおススメできる問題集です。