約3か月かけて一周しましたが、改めて英語のハノンのご紹介
英語のハノン初級をようやく一周しました。この本はかなり効果的で、しかも楽しくやれるので、良い意味で衝撃が大きかったです。以前にもこのブログで、この本について書いています。直接的な効果以外にも、いろいろと気付く事が多くてためになりました。
英語のハノンについて、細かい説明は以前にも書いていますので、ここでは簡単にご紹介したいと思います。
この本はパターンプラクティスの本です。音源の指示に従って、英文の部分を「少しづつ変更」して文章を構築しつつ、発声練習を繰り返します。この「少しづつ変更」というのが重要なところで、それぞれの文法事項に特化した「少しづつ変更」が、毎回要求されます。
扱う文法事項は多岐にわたっています。文型や疑問詞、完了形、不定詞、分詞など、中学校で学ぶような英文法の基礎を、この本で練習することができます。ただ文章を繰り返すだけの練習ならば、瞬間英作文と同じと思うかもしれません。
瞬間英作文と大きく違うのは、音声の指示にしたがって、学習者が自力で、しかも瞬時に文章の「少しづつ変更」をやらなければいけない所にあります。決まった文章を繰り返す瞬間英作文より、かなり頭を働かせる必要がある、というわけです。結果として、正しい文法を駆使して、英文を組み立てる力が身に付くようになっています。
決して簡単ではなく、脳にかなり負荷がかかる
この本は「初級」という事になっていますが、そんなに簡単ではありません。初めの部分では、比較的簡単な時制(現在形や過去形)や文型を扱うので、ある程度スラスラ進むかもしれません。ただ、完了形や不定詞、分詞の練習が始まると、文章がかなり複雑になって行きます。正しい文法で、瞬時に文章を作るのが、なかなか難しくなります。文章にオマケの表現がついて、あえて長くなっているものも増えて行きます。
また、音声の指示に従って文章を作るときに、その都度考えている時間はありません。ほとんど無意識レベルで文章を構築できるようになってようやく、テンポよく学習が進むような作りになっています。ちなみに、音源は「ナチュラルスピード」と「スロースピード」が用意されているので、慣れるまではスローでやるのも良いと思います。
3か月で一周を終えた私の学習ペースについて
私はだいたい、一日20分かけて、約3か月で英語のハノン初級を1周しました。やり方としては、毎日平均で3項目ぐらいに挑戦しました(一つの項目に文章が5つ含まれる)。まずは、挑戦する項目の文章が、スラスラと言えるようになるまで、練習を繰り返します。そして次の日以降、すべての文章が一発でスラスラ言えた場合、その項目はクリアとみなして次に進みました。そういう感じで、少しづつ項目を消化して行きました。
今数えたら、項目の数として「119項目」あるようです。これを3か月(90日)でこなしたので、平均して毎日1.3項目ぐらいクリアしている計算になります。先ほども述べましたが、前半は比較的難易度が低い一方で、後半は結構難しくなっていきます。項目が一つも消化できない日も、後半戦は増えて行きました。ですので、平均1.3というのはあくまでも目安です。
ちなみに後半戦は、英語のハノンの勉強に、30分以上時間をかけることも多かったです。だんだんと難易度が上がって来るので、一つの項目をスラスラ言えるための、必要時間も上昇していきました。毎回の勉強をキリ良く終えるために、延長戦になることが結構ありました。ですので、トータルの勉強時間は「20分×90日=30時間」を、だいぶ超えると思います。
英語のハノンも暗記系の勉強だが、文章へのアプローチの仕方が違う
リピーティングや暗唱の勉強は、通常かなり負荷が高くて、継続が難しいケースが多いです。私も長文の暗唱に挑戦したことがありますが、目標の文章がスラスラ言えるようになるまで、時間がかなりかかりました。また、いったん覚えた物を維持するのにも、大変な労力が必要です。
ですので、暗記系の勉強は効果が非常に高いものの、あまり推奨されていない気がします。どちらかというと、古典的で、スパルタな勉強方法として認識されていると思います。勉強のモチベーション維持を考えた場合、確かにあまりおススメできないと私も思いますし、誰でも出来る勉強方法とは言い難いです。
ところで英語のハノンも、実は暗記系の勉強だと私は思います。なぜかというと、音声の指示に従って文章を作り出すために、ほとんど時間の余裕がありません。結果的に、ほとんどの文章を暗記して、無意識レベルで発声をする必要があります。文章が長くなればなるほど、また、文法が複雑になるほどに、難易度と負荷は上がっていきます。
ただしここには、他の暗記系の勉強と大きく違う部分があります。英語のハノンでは、文章を思い出すためのヒントが毎回提示されるのです。文章を丸々暗記するのではなく、「元の文章」を「少しづつ変更」する、という形で勉強が進みます。「元の文章」は最初に再生されるので、そこは丸暗記をする必要はありません。実際に暗記することになるのは、「少しづつ変更」をする、その部分が中心になります(結局全体を覚えることにはなるけど)。
負荷が強くなるのに、なぜか楽しさも大きくなる不思議
この「少しづつ変更」する部分に集中して、無意識で言えるようにするという行為も、結局暗記なので負荷は高いです。クリアをするためにかなり苦労をして、何度も練習をしなければなりません。ただ、なぜかこの作業は、やっていてあまり苦しく感じませんでした。楽しささえ感じることがあります。それは何故なのか。
例えば、すべてを丸暗記する勉強にはヒントが無いので、いわば孤独で絶対的な負荷が脳にかかります。一方で、英語のハノンにおけるヒント付きの暗記では、音声データと格闘をしている感覚があります。結果として「がんばってクリアしてやろう」という意欲が生まれます。そして、クリアすることができれば達成感を得て、モチベーションが維持されることになります。
この、「クリアしてやろう」という気持ちや、「達成して気持ちが良くなる」感覚について、私は以前、詳しく書いたことがあります。英語のハノンと「音ゲーやリズムゲー」には類似点があります。本を一周終えた現在、英語のハノンは本当にゲーム的だなー、としみじみ思っています。
ゲームの自動化と、頭の中のそろばん
例えばパズルゲームのテトリスでは、次に出てくるブロックのヒントが、画面の上部に表示されます。初心者のうちは、そのヒントをゲームに生かすのもなかなか難しいはずです。ただ、練習を繰り返して行くと、そのヒントは無意識的に頭に入るようになります。どのようにそれを全体に組み合わせるのか、瞬時に判断が出来るようになります。この判断の自動化が、まさに英語のハノンの目指しているところだと思います。
上記の動画では、テトリスの上級者がパズルをしつつ、実況をこなしています(視聴者のコメントまで読んでいる)。頭の中で自動化が実現すると、ゲームをしながら、本筋とは別の部分へ意識を向ける事も可能になります。英語のハノンでも慣れてくると、発音や文章の細部について、集中しながら発声をするようになります。そのようにして、文法の勉強以外にも、様々な効果が見込めると感じています。
最近英語のハノンをやっていて、もう一つ似ているかもと思ったのが、「そろばん」です。私はそろばんの経験が無いのですが、そろばんの経験者は「頭の中にそろばんを持つ」ようになるという話をよく聞きます。そのイマジナリーそろばんによって、あらゆる計算が、頭の中で自動化するという効果があるそうです。
英語のスピーキングで、自分の言いたいことを言うためには、頭の中に「自動化された文法書」が必要になるのだと思います。会話の時に、細かく文法の事を考える余裕はありません。言葉の処理は瞬時に、無意識的にされる必要があるのです。
ただ、この部分を練習する方法は、今までなかなかありませんでした(個人的に)。恐らく、英語圏で生活をしていれば、「自動化された文法書」を頭の中に作ることは出来るのでしょう。しかし、日本で生活している場合それは難しいです。オンライン英会話をやったとしても、ついつい、すでに知っている言い回しばかり、利用しようとしてしまいます(個人的に)。そうすると、頭の中の文法書が全く進化しません。
しかし、英語のハノンを使えば、頭の中の「自動化された文法書」を鍛える事が出来ます。自動化のスピードを速め、表現の幅も広げることが出来るはずです。しかも、この自動化の過程がゲーム的なので、モチベーションが維持しやすいです。誰もがこの過程を、ゲームのように楽しめる素質を持っていると思います。
ゲームとして楽しめると、学習が軌道に乗る
勉強を継続することがいかに難しいか、いままで7年間勉強をしてきて、私は痛感しております。当たり前の事ですが、英語力を向上させるためには毎日の勉強がかかせません。ただ、そのためのモチベーションの維持が非常に難しいのです。英語学習に疲れて、挫折してしまう学習者がたくさんいます。
例えばTOEICの取得点数によって、会社から報酬が出たり、英語圏の恋人がいる、みたいな要素は確かにプラス働くでしょう。ただ、それだけではなかなか勉強は続かないような気がします。もっと内的で、継続的なエネルギーが必要になるはずです。
というわけで、私は英語学習のゲーム化ということに注目をしているのです。そして、英語のハノンは、英語学習のゲームをより洗練し、効率化する素晴らしいツールだと思っています。興味を少しでもお持ちならば、是非やってみる事をお勧めします。いったん慣れてしまえば、かなり楽しくなるはずです。
今後の予定として、私は英語のハノン初級を周回してやる予定です(何周やる事になるのだろう……)。すでに中級もkindleで買ったので、どこかのタイミングでそちらにも手を付けようと思っています。その時には、また詳しくレビューをしたいと思っております。