【TOEIC(R) L&Rテスト全パート完全攻略800点+】を細かくレビューします

過去最高クラスの難易度に震えた

まず最初に、この本を一言で表すなら、

どう考えても900点後半から満点を目指す人向けの難易度なので注意が必要

です。タイトルに800点+とありますし「800点を超えたいなら「難問」を攻略しなさい!」という売り文句が表紙に記されています。さらに本の裏面には、

対象レベル:中級から

英検2級~

TOEIC650点程度~

と書いてあります。しかし、私が解いてみた感じでは、600点~700点代の方が800点を超えるために使う教材としては、難易度が高すぎです。むしろこの本は、900点後半から満点を目指す人にもっとも適していると感じました。

この本をおすすめ出来る学習者のレベルとは

「現在650~700点代で、800点を目指す方」には、あまりおススメできません

「現在800~900点前後で、それ以上を目指す方」には、ややオススメできます

「最高スコアが900点後半で、なんとか990点に達したい」というかたには、まあまあおススメ出来ます

この本に含まれる問題を、現在800点以下の方が解こうとすると、かなり苦労するはずです。正解数がかなり少なくなるでしょうし、ストレスも大きくなるでしょう。また、解説を読んでもミスをした理由が良くわからない、というケースが出てくると思います(特にリーディングパート)。

著者の方はTOEICの専門家なのに、なぜこのようなギャップが生じてしまうのでしょう。これは、つい最近私がレビューをした、「世界一わかりやすいTOEIC L&Rテスト総合模試2[800点突破レベル]」でも、似たような傾向がありました。

著者が、学習者の学習意欲を、かなり高めに想定している可能性があります。英検2級やTOEIC650点の方が「歯を食いしばってストレスに耐え、難問を繰り返し解く」事が出来れば、確かに800点はクリアできるでしょう。ただ、そこにはとてつもない苦労とストレスが伴いますし、学習の効率も良くないと思います。

800点を超えるために、高地トレーニングは必要ないはず

個人的な経験から言えば、公式問題集と同等のレベル、つまり、本番と同じぐらいのレベルの模試を繰り返し解いていれば、800点越えは難しくないと思います(量をこなす必要はある)。文法問題や語彙に関しても「でる1000」や「金のフレーズ」を地道にこなす事で、効率よく点数を上げる事が出来るはずです。

一方で、この「TOEIC(R) L&Rテスト全パート完全攻略800点+」では、TOEICにほぼ出てこないレベルの単語が頻出します。文法問題も、重箱の隅的な物が結構含まれています。リスニングは聞き取り自体はそれほど難しくありません。ただ、問題一つ一つの音源が長めなのと、あいまいな選択肢が多いので、正答を選びにくくなっています。

もしこれが「800点+」ではなくて「990点+」とタイトルに入っていれば、納得の内容です。私が以前にレビューをした、「TOEIC L&Rテスト990点攻略」は「満点を目指す為の本」という事がはっきりと記されていました。

実は、今回の「全パート完全攻略800点+」と「TOEIC L&Rテスト990点攻略」は、内容の構成に非常に似ている部分があります。具体的に言うと、本の前半で難問を解きつつ、著者のアドバイスや勉強方法を学ぶことが出来ます。そして後半で、難問だらけの模試を実際に解いてみる、という二部構成になっているのです。

この二部構成自体は良いと思います。難問の解き方に対する解説が充実しているのも良い点です。また、著者の方の独自の視点や、勉強方法が紹介されていて、ためになると思います。ただし、その恩恵を受けられるのは、一部の上級者だけではないか、と私は思いました。それだけ問題の難易度が高いので、注意が必要です。

「TOEIC(R) L&Rテスト全パート完全攻略800点+」が超難しい理由(個人的見解)

繰り返し解いて実力を上げる目的で、あえて難易度が高く設定されている

つまり、反復学習を前提にしているので、初回で点数が取れない事は想定済み

TOEICの本試験の練習というよりは、トレーニング向きに作られている

解説が丁寧なので、800点以下の方でも、ついてこられるように作ってある

これは「世界一わかりやすいTOEIC L&Rテスト総合模試2[800点突破レベル]」のレビューで書いたものと全く同じなのですが、著者の方がなぜこの難易度で「800点」と言っているのか、自分なりに納得するには、こう考えるしかない、という感じです。

具体的にどのように難しいのか

私の得点状況をご紹介します。この本にはTOEIC本番と同様の形式で、1回分の模試(「難問だらけ模試」という名称)が含まれています。

リスニング  80/100 part1:3ミス part2:2ミス part3:10ミス part4:5ミス

リーディング 84/100 part5:6ミス part6:2ミス part7:8ミス

補足:リーディング8分時間超過

リスニングの得点率が低くなった明確な理由がある

リスニングに関して、私はTOEIC本番で5ミス以上する事は滅多にありません。他の難問模試を解いた時も、9割を下回る事はほとんどありませんでした。それが、今回は8割しか取れませんでした。それには理由があります

この本に付属する模試は「難問だらけ模試」と名付けられているのですが、リスニング自体はあまり難しくありません。音声のスピードは、本番とほぼ同じだと思います。聞き取り辛い発音や、音の短縮もそれほどなかった印象です。ではなぜ点数が取れなかったのか。それは選択肢の紛らわしさと、リスニング音源の長さが原因です。

まず、part1で3問も間違えています。選択肢が耳慣れない単語を含みつつ、はっきりとは選びにくい問題ばかりでした。受け身の進行形を扱う問題はpart1で頻出ですが、それを状態動詞か、動作動詞なのかを見極める問題があって驚きました。本番ではほぼ出ない、かなり難易度の高い問題だと思います。

part2受け答えに距離がある問題がほとんどです。素直な受け答えの問題はありません。ただ、これは難問模試のpart2でよく扱われるテーマですし、極端に難しくはなかったです。

part3で私は間違えまくったのですが、問題の音源が長すぎるのが主な原因です。TOEIC本場のpart3の長さは、30秒から40秒ぐらいです。一方でこの模試の問題は、50秒~60秒の問題がほとんどでした。内容も結構複雑なので、細部の情報を脳に留めて置く事が出来ませんでした。選択肢の表現も紛らわしいので、答えを選ぶときには「ギブアップ状態」になってしまう事が多かったです。

part460秒ぐらいの問題が多いです(本番は30~60秒)。part3よりは内容が単純だったので、ミスを少なくすることが出来ました。ただ、選択肢の表現があいまいなので、こちらも非常に解きにくかったです。

リーディングはあいまいな選択肢+文章量が多い

私はpart5力をいれて学習をしています。ですので、それなりに知識はあると思っています。

ですが、この模試のpart5で初めて出会う語彙、語法の問題がいくつかありました。慣用表現も初めて知ったものがありました。この模試を高地トレーニング向けの教材と考えるならば、こういう出会いはもちろん歓迎です(満点を取るためには必要な要素)。ただ、これらの文法問題は、まず本番で出る事は無いと思います。

part6と7に関しては、文章の量が多くて珍しく時間をオーバーしました。私の実力だと、75分以内でこの模試のリーディングを解くならば、かなり飛ばし読みをする必要があります。選択肢の表現もあいまいな物が非常に多いので、じっくり考える時間が無ければ、ミスがさらに増えてしまうだろうと思いました。

800点突破を目指すために使う場合は注意が必要

私は英語を趣味で勉強していて、TOEICの満点を目標にしています。個人的にはこの「TOEIC(R) L&Rテスト全パート完全攻略800点+」で、得る事は結構ありました。ただ、TOEIC対策の教材として考えた場合、有効活用できる人はかなり限られる印象を受けました。900点後半を目指している方以外には、あまりおススメできません

この本はタイトルに「800点突破」と書いてあるので、600点~700点の方が購入するケースが多いと思われます。その場合「800点を取るためには、こんなに難しい問題を解く必要があるのか」という印象を、学習者に与える可能性があります。結果として、モチベーションを失ったり、ストレスを貯めてしまう人もいるでしょう。ですが、その心配は全く必要ありません

本番はもっと解きやすい問題がほとんどです。ですので、800点突破を目指すなら、難しい問題を解くよりも、標準的な問題を大量にこなす事をお勧めします。

私が過去に解いた模試のレビューは以下に一覧になっています。

難易度別にランク分けをしてある(易しい1~難しい6まで)のですが、800点突破を目指すならば、難易度2~4あたりの模試を繰り返し解くと、効率よく点数を上げる事が出来るはずです。ちなみに公式問題集は、平均的な難易度と考えて難易度3としています(一方で今回の模試は6)。