「実践ビジネス英語」の難易度は絶妙に調整されている
今回の話の要点
「実践ビジネス英語」は難易度的に英検1級にレベルが合致しており、その教材として使われるケースが多いと思います。よって、TOEICのリスニング対策として使うには、難易度が高すぎるという印象があるかもしれません。
ただ、TOEICの900点後半~満点を目指す場合(リスニング単体は495点満点)には、リスニングの細部を聞き取る訓練が必要になるはずです。その際に、この「実践ビジネス英語」がかなり理想的な教材になると感じたので、今回おすすめしたいと思いました。
TOEIC用のリスニング音源(模試や問題集の物)は通常、かなりクリアな英語で作られています。よって、音の連結や訛りに対する対策はあまり出来ません。ところが、実際のTOEICのリスニング問題には、音の連結や特徴的な訛りが一部含まれることがあります。そして、それを聞き取ることが、高得点を取るための鍵になるはずです。
細部を聞き取るために、ネイティブ向けのニュースやドラマを教材に使う、というのも一つの方法です。ですがその場合、リスニングの難易度が高すぎて、学習の効率が悪くなってしまう可能性があります。
一方で「実践ビジネス英語」は、「ネイティブ向けではないが、かなり難しい音源」という絶妙なレベルの素材を提供してくれています。しかも内容が非常に面白いので、勉強のしがいがあります。これほど上手くレベル調整されているものは、他になかなか見つからないはずです。TOEICの高得点を目指している方は、是非試してみて下さい。
この要点だけで十分かもしれないですが、もう少し詳細に語ります。
「実践ビジネス英語」とは何か、難易度はどれくらいなのか
「実践ビジネス英語」はNHKのラジオ番組で、かなりの歴史があります。NHKのラジオ英語は種類がたくさんありますが、この「実践ビジネス英語」はその中で一番難しいレベルに位置しており、上級者向けとして作られています。具体的にどれくらいの難易度かと言うと、国際的な指標であるCEFRで表す場合「C1」となっています。これは、英検1級もしくはTOEICの945点に相当する難易度になるようです。
私は学習5年目(現在8年目)にTOEICで980点を取った後、英検1級を目指すことにしました。その時に、リスニングの教材をどうするのか、結構迷っていました。
英検1級対策のリスニング教材は、過去問も含めて、それなりに出版されています。ただ、毎日勉強をするためには量が足りませんでした。先にも触れていますが、英検一級のリスニングは「ネイティブレベルではないが、学習者のレベルとしてはかなり上級」というわりとニッチな領域に位置しています(なので適した教材が見つけにくい)。
ネットで調べた結果、「実践ビジネス英語」が英検1級対策にちょうど良い、という意見を多く見かけました。そこで私も試してみたところ、確かにちょうど良いレベルかもしれない、と感じました。というか、1級よりもさらに難しいぐらいのレベルで、手ごわいなーと思った記憶があります。
ラジオ放送自体は、残念ながら2021年に終わってしまっています(続編的なものはある)。ただ、放送を基にした書籍が、これまでいくつか出版されています。つまり、ラジオの音源やテキストが無くても、上記のような書籍を使って、勉強をすることが出来るわけです。
当時(学習5年目)に初めて取り組んだ時は、かなり難易度が高いと感じましたし、聞き取れない部分がかなりありました。それでも、テキストを確認しながら繰り返し聞くことによって、徐々に意味が頭に入ってくるようになりました。結果的に、英検1級のリスニング対策として、非常に効果的な学習が出来たと思います。
実は、TOEIC900点後半レベルも絶妙にカバーしている
TOEIC900点と満点の間には、結構レベル差がある
英検1級と、TOEICの難易度の比較はネット上でさまざまなデータが出ています。ですが、本当のところがどうなっているのかは、なかなか説明・理解が難しいところです(個人の印象の差も出やすいので)。ですが、この「実践ビジネス英語」を通して考えると、難易度の比較が分かりやすくなると思います。
つまり、先ほどのCEFRで表す難易度「C1」≒「英検1級もしくはTOEIC945点」≒「実践ビジネス英語」と考えると単純化できます。そして、この「C1」は、普段はあまり注目されることが無いと思うのですが、900点後半~満点を取りたい場合には、教材を選ぶ際の指標になるはずです。
ここで試しに、TOEICのリスニングで「9割(450点)」を取るレベルと「455点~495点(満点)」を取るレベルの、二つに分けて説明したいと思います。
これはあくまでも私の感覚ですが、TOEICのリスニングで9割の点数を取るためには、
細部を一部聞き漏らしてもOKだが、全体の意味は、ほぼ理解している。
試験に慣れていて、設問の選択肢や話の流れから、正答を推測して選ぶことが出来る
ぐらいのレベルが必要になるはずです。私も、模試や問題集を大量にこなすことによって、リスニングで高得点を取ることが出来るようになりました。ただし、この状態だと、細部は聞き取れていません。よって、点数にそこまで安定感が生まれないので、さらに上を目指している人は、もうひとふんばりの努力が必要になります。
つまり、TOEICのリスニングで455点~満点を取るためには、
細部がより聞こえる状態になっており、確実に全体の意味が取れている。
推測の割合が少なくなる一方で、より高度な推測が出来る(音の連結部分など)
という状態を目指す必要があるはずです。
TOEIC満点を目指している方こそ、使って欲しい
私が上記のレベル分けを意識するようになったのは、つい先日レビューをした「TOEIC L&Rテスト990点攻略」の影響が大きいです。この本は、本当に満点を取りたい学習者の為に作られています。
この「TOEIC L&Rテスト990点攻略」では、例えばpart2でディクテーション(音の書き取り)をすることが推奨されています。リスニングの細部に、より集中する事の重要性が述べられていました。
私は最近、TOEICのリスニングの点数が不安定になっていたので、上記のアドバイスに非常に感銘をうけ、納得感がありました。ということで、ディクテーションまでは行かないとしても、細部を聞き取る訓練をしようと思ったわけです。そのための教材として「実践ビジネス英語」を使ってみたところ、改めてそのレベル調整の素晴らしさを感じました。「C1」レベルの学習者の、細部を聞き取るための訓練に非常に適しています。
英検1級を目指して「実践ビジネス英語」を使っていた当時、何度も繰り返して音源を聞いていました。それで十分理解したつもりになっていたのですが、今回改めて取り組んでみたところ、自分が聞き取れない部分がよりはっきりとしました。細部に集中して聞いていると、以前は気が付かなかった発見がたくさんあります。
ということで、「実践ビジネス英語」は、英検1級のリスニング対策に使えるのはもちろんなのですが、TOEICの満点近くを目指してる学習者の方にも、是非使ってみて欲しいと思います。