2024年6月24日追記
ヤフーニュース(jcastニュース)経由で、興味深い関連記事を見かけたのでご紹介します。東大のリスニング対策で、予備校生が雑音入り音源で勉強しているという内容です。
本当に切実に点数を上げたいならば、ここまでやる必要があり、効果もあるという事が分かりました。ただ、これはTOEICと同様に、主催者側が問題を放置しているから起きている問題でもあると思います。特に大学受験の場合は、公平性をより保つ必要があるのでは、と感じました。
※今回の話はTOEICのリスニングに関する、私の愚痴みたいな内容です(ただし切実)
自宅で聞くのと同じ音質は、そもそも期待すべきではないが
私は今まで、TOEICを11回受験しています。長年にわたって受験している方もいるので、私の回数は大したことはありません。ただ、11回も受けていると、それなりに気付くこともあります。最近特に気になっているのが、TOEICの受験会場によってリスニングの音質が変わる、という事です。
自宅で公式問題集の音源を聞く場合と、試験会場でリスニングの音源を聞く場合の間には、明確な音質の差があります。自宅ならば、MP3ファイルをパソコンやスマホで再生して、雑音の無い、極めて良い音質で音源を聞くことが出来ます。それに比べて、試験会場で聞くリスニング音源は、クオリティがやや下がります。
たいていのTOEICの試験では、一つのスピーカーを使って、会場全体に聞こえるように音源を流します。一度に大人数が試験を受ける事になっている以上、自宅と試験会場で、リスニング音源の聞き取りやすさが変わるのは、仕方のない事です。受験者もそれを想定して、リスニングの勉強をすべきです(私もそこに文句は無い)。
また、TOEICを受験した事がある方はご存じだと思いますが、TOEICの試験前には、受験者がリスニングの聞こえ方をチェックするための時間があります。そこで聞こえにくかった場合、席の移動を申請する事が出来ます。たいていの会場で、スピーカーは部屋の正面に置いてあります。その近くの席に移動をすれば、音のボリュームに関しては問題が無くなります。
一方で、反響音が酷い場合はやっかいです。これはなかなか説明が難しいのですが、受験会場の建物や教室の構造によって、リスニング音源の音質が下がります。会場によって程度の差はあるのですが、反響音が著しく酷い場合があります。
反響音が酷い場合、実際にどのように聞こえるのか再現をしてみました。もちろん完全に再現をすることは不可能なのですが、個人的に、実体験に近いサンプルが出来たと思います。
リスニング音源が反響音を含むケースを再現してみた
音源のテキストは以下の通りです(自作)。
Mike, our third quarter report shows that fridge sales are not doing so well.
(マイク、第3四半期の報告によると、冷蔵庫の販売があまりうまくいっていないようです)
上記の文章をグーグル翻訳に入力して、そこで取得できる機械音声をダウンロードしました。それが①で、②は私が後から反響音を加えたものになります(音の編集アプリで簡単に出来た)
※注意 再生ボタンを押すと音が出ます
①通常の音源
②反響音の酷い音源
反響音の加工がひどすぎる、と思われるかもしれません。確かにこれは私の感覚だけで作ったものなので、客観性は保証できません。
ただ、私が今まで11回試験を受けた中の2回は、②に近い(と私が感じる)反響音のあるリスニング音源でした。元の文章を知っていれば、聞き取ることはそこまで難しく無いと思います。ただ、これをテキスト無しで初めて聞いた場合、細部まで聞き取るのはなかなか難しいです(個人的に)。
ちょっと難しい単語が含まれていたり、文法的に複雑だと、難易度がさらに上がります。I’veとかyou’dなどの短縮が含まれていたら、その部分を聞き取るのはほぼ無理です(私の能力では)。
それでも、part3とpart4に関しては、細部が聞こえなくても文脈で答えが選べるケースが結構あります。一方でpart1とpart2は文章が短いので、細部が聞こえないと問題に答えようがない、という場合があります。
実際に、前回(第321回)のTOEICのpart2では、反響音のために細部が全く聞き取れない物がありました。その結果、適当に答えをマークした問題が3つほどありました。
TOEICの運営会社は恐らくこの問題を把握しているはず
試験会場の音源のクオリティは、一定以上に保たれるべきです。あまりにリスニングの音質が酷い場合、他の会場の受験者と比べて、公平さが保たれません。試験会場は自分で選ぶことができないので、学習者の「実力」ではなくて「運」によって、リスニングの点数が変わってしまう事になります。
この問題に関して、考えなければならないポイントがいくつかあると思います。それは以下のとおりです。
①TOEICの運営会社が反響音を問題視しているのかどうか
②反響音の問題が存在するならば、なぜ問題になっていないのか
③毎回満点を取っている人がいるのだから、反響音があったとしても、すべて許容範囲内と考えるべきではないのか
まずはネットで情報を集めてみました。リスニングの反響音に関して、運営にクレームをつけて、それに対して回答を貰った人はいるのでしょうか。あまり情報が無かったのですが、以下の動画が参考になりました。
中村澄子先生は、TOEICの世界ではかなり有名な方です。上の動画では、過去に先生ご自身が経験した、反響音の酷かった会場の話をされています。そこで運営に反響音に関して指摘はしたものの、その後10年経っても同じ会場が使われている、という事でした。
動画の中で「県内ではそこしか会場が無いので比較が出来ず、受験者が音の悪さに気が付いていない」というお話がありました。私はここが、この問題の重要なポイントだと思います。つまり、
音質を気にしているのは、少数の上級者かつ、複数回受験している人だけの可能性が高い(ごく一部の人しか違いに気づかない)
よって、クレームの数も少ない(席移動をする人が少ない理由の説明にもなる)
結果として、運営は問題を把握していたとしても、改善する必要性を感じていない(言い方は悪いが「放置しても問題は大きくならない」と判断している)
上記は私の勝手な想像ですが、それほど外れていないと思います。
先ほど、音のボリュームに関しては、席移動をすれば対処が出来るということを述べました。ただ、実際の試験で席移動をする方はほとんどいません。これは何故でしょうか。恐らくですが、リスニングの音源にクレームを付けるためには、一定以上のリスニングの能力が必要になります。
「細部が聞こえないので困る」という問題は、高得点を目指している人にとっては非常に気になる問題です。例えば満点を目指しているならば、少しでも聞き漏らしたくないはずです。一方で、初中級者の方は「まだ細部を聞き取るレベルに達していない」ので「音質はあまり問題視していない」可能性があると思います。
また、そもそも受験回数が少ない方は、音源のクオリティの良し悪しを比較する事が出来ません。聞こえ方テストの時に「ちょっと聞き取り辛いかな」と思ったとしても、席移動をするメリットがどの程度の物か、知らない方も多いはずです。それで「まあいいか」となってしまうケースもありそうです。
一部の超上級者ならば、反響音が酷くても聞き取れるとは思う
慣れと知識があるならば、反響音のある英語も完全に聞き取ることは可能でしょう。ネイティブならもちろん、毎回満点をとっているような、TOEICの先生方ならばその能力があるはずです。
しかし多くの英語学習者にとっては「基本的な英語を正しく聞きとる」という事が一番の目標であり、その能力を試すためにTOEICを受けているはずです。「反響音によって聞き取り辛い英語」を聞くために、我々は勉強をしているわけではありません。
もちろん、音の消失や短縮によって聞き取り辛くなる、という「そもそもの英語の聞き取り辛さ」が試験で試されるのは当然です。また、ネイティブのイントネーションを聞き取ることも重要です。だからこそ、アメリカ・イギリス・オーストラリアの訛りが含まれた音源が、TOEICでも使われています(ここは難しくても、聞き取るために勉強すべき領域)。
一方で、音質が悪い英語を聞き取る事は、TOEICの出題範囲内なのでしょうか? 例えばTOEICが、駅やショッピングモールのような雑踏の中で英語のアナウンスを聞く、という場面も想定しているならば「反響音も出題範囲内」と言えると思います。
しかしだとしたら、すべての試験会場で「雑音を含んだ音源」を流さないと、すべての受験者に対して公平ではありません。一番最初に述べましたが、完全に雑音の無い音源は求めていませんし、完全に公平にすることも不可能なのは分かっています。問題は「会場によって差が酷いケースがあり」「それが恐らく放置されている」という事です。
長々と書きましたが、結論としては、
TOEICの運営会社は反響を問題視していないと思われる
問題視している人は一部の受験者なので、今後改善の見込みはほぼ無い
それでもTOEICを受け続ける上級者は、反響音を超えて行け
ということになると思います(個人の感想です)。
TOEICは変わらないと思うが、英語の試験は変わると思う
今回、私の想像で勝手に話を展開したので、間違っている部分もかなりあると思います。前回の試験(第321回)で、私はリスニングの反響音にかなりがっかりしました。恐らく、似たような感じでストレスを貯めているかたは、そこそこいらっしゃると思います。
この問題が解決されることはなさそうなので、諦めるしかないのだと思います。そもそも、TOEICを毎回受けているような受験者は、それほど多くないはずです。運営側もそんな少数の人の意見を、いちいち聞いているわけにもいかないのでしょう。
とはいえ、受験や就職のために、生涯でほんの数回だけTOEICを受ける人もいるはずです(むしろ、そのような方が多いはず)。その方が、運悪く反響音の酷い会場に当たってしまったら、かなり損をすることになります。本人は損をしたことに気付く事も無いわけで、これはかなり残念な状況です。
例えば将来、音の聞こえ方を客観視できるようになれば、状況が変わるかもしれません。発展目覚ましいAIならば、そのようなシステムを実現できるかもしれません。というか、AIの進歩がすごいので、英語のテストの仕組みも大きく変わるかもしれません(問題が自動生成されたりしそう)。
1人の受験者として、より公平で、安定感のあるテストが受けられるよう願っております。