「英文対照 天声人語」が英検1級向けリーディング学習にちょうど良かった話

レベルにあったリーディング教材を見つけるのが大変

学習4年目に目標だったTOEIC900点をクリアすることが出来ました。そこで、次は英検1級の合格を目指して勉強を始めることにしました。そこで問題になったのが、教材をどうするのか、ということです。今回は、その中でもリーディングに関して書きたいと思います。

TOEICに関しては書籍が山のように発売されていて、ネット上にレビューも豊富です。なので、それらを参考にしつつ、本屋さんに行って実物を確認した上で購入することが出来ます。教材選びに苦労することはほとんどありませんでした。

しかし英検1級の場合、コレをやっておけば大丈夫、みたいな教材を見つけるのは至難の業でした。そもそもネット上にTOEICほどの情報がなく、あったとしても結構みんな、自由に教材を選んでいるような印象でした。なので、「TOEIC900点をクリアした人が、英検1級を目指す場合」というある意味限定された条件下で、どの本を選ぶべきかかなり迷いました

もちろん、英検1級を主宰する旺文社から出ている、過去問や参考書はやったほうがいいと思います。ただ、それも数が限られているので、それらをやり終わったら何を選べばいいのか、という問題が残ります。そもそも英検1級対策と銘打った本が少ないうえに、過去問は中古で手に入れようとすると、値段がだいぶ高いです。もっと廉価に、数をこなす目的で使える書籍はないか、という感じで探していました。

その結果、いろいろと試した中で、この「英文対照 天声人語」が結構おススメできるのでレビューをしたいと思います。私がこれを選んだ理由の一つが「対訳(日本語訳)」があるということです。私の場合、意味がつかめない部分が残るとストレスがたまるので、翻訳がついていることは今のところ必須です。もっと上級者になったら、ネイティブ向けの雑誌とかも、読んではみたいですけど……。

ネット上では、英語のニュースサイトをお勧めしている人も結構いらっしゃいました。確かにそれもいいのですが、ネイティブ向けだと難易度が高すぎることが多いです。一方で、英語学習者向けの英語ニュースサイトがあるのですが、こちらは比較的おススメできます。

この「BBC Learning English」は無料ですし、記事がレベル別にもなっているので非常に使いやすいです。ただし、もちろん日本語訳はついていません。翻訳サイトの「DeepL」を使えば、高精度の日本語訳を簡単に手に入れることはできます。

……そう考えたら、本当にこれもいいなぁ、と今思った。でもまあ、記事を選んで翻訳して、というのも少し手間ですよね。もっと簡単に翻訳付きの教材を手に入れたい。あと、記事の内容も身近なもののほうが頭に入りやすい。ということで、「英文対照 天声人語」がオススメです(説得力……)。

対訳とは書いてあるが、逐語訳ではない(完全に英文と対応していない)

英検1級の過去問や参考書は、基本的に逐語訳になっていると思います。つまり、英語と日本語の文章が、一対一で翻訳されているような形式です。特に精読したかったり、文法が気になる学習者にとって、それはありがたいというか、必須の形式だと思います(細かくチェックできるので)。

一方で、この「英文対照 天声人語」はおおまかには逐語訳なのですが、適度に文章が省かれたり、表現がアレンジされたりしています。小説ほどではないのですが、意訳されている(翻訳者の意図が入っている)感じです。

学習者にとっては、これはデメリットにもなると思います。ただ、私の場合は、細かく読むというよりも、リーディングの量を稼ぎたかったので、その点はあまり気になりませんでした。むしろ、翻訳者がどのようにアレンジして訳しているのか、を見ることが出来るので、英語と日本語の表現方法の違いなどを学ぶ良い機会になったと思います。

それと、難しい単語には注釈が入っているので、いちいち調べなくてもいいのがありがたいです。ただし、使われている単語がかなり難しいケースも多いです。理由はよくわからないのですが、英訳でかなりの難単語が使われることがあります。英検1級でも出ないような、古語とか慣用表現もたまに出てくる印象です。おそらく、読み物としての文章を作っているからそうなるのでしょう。実際に、学習用というよりは、純粋に読み物として楽しめる素材だと感じます。

ですので、好みが分かれるとは思います。学習者の目的によってハマることもあるが、そうでもないときもある、ぐらいの感じでしょうか。私はかなり気に入っているので、ここ数年、毎日ひとつ、コラムを読むようにして学習を続けています(実際にコラムだけど)。

日本の過去の情報が面白いし、古本なら比較的安く手に入る

この「英文対照 天声人語」シリーズはかなり歴史があるようで、私が見た限り1980年代の古本もネット上で売っていました。基本的に英語系の書籍は、中古だとしても値段が高めになる傾向があります。ただ、このシリーズに関しては、そこまで値段が高騰していない印象です。ですので、メルカリやヤフオクで安く手に入れることもできますし、ブックオフオンラインなどでまとめて古いものを購入することもできます。

内容に関しては、「天声人語」なので、基本的に時事問題を扱っています。私は新聞を見ないので詳しくはないのですが、「天声人語」が朝日新聞の名物コラムなのは知っています。日々の出来事を鋭い視点で、しかも読み応えのあるエッセイとして書かれ、新聞に毎日掲載されているものです。実際に、私も「英文対照 天声人語」シリーズを通して読んでいるわけですが、面白い話がとても多いです。

例えば、私は今、「2016年冬」のバージョンを読んでいます。この中では、プーチン大統領が安倍首相(当時)の地元を訪れた記事があったりします。今の状況と比べながら読んでも、なかなか興味深いです。元が新聞に掲載されているエッセイという性質上、政治系の話題が比較的多いので、話が固すぎて物足りない時もあります。ただ、他のジャンルも広く扱われています。

例えば、1985年バージョンだと、「風の谷のナウシカ」が公開されたときの話題とか、ハレー彗星の観測に関する話など、とても面白く読めました。このような記事は、他の素材では英文で読むことは難しいと思うので、結構貴重な存在だと思います。しかも、日本語、英語ともに、かなり上質な文章を味わうことが出来ます。ちょっと上質過ぎるかな、と思う時があるくらいです(表現が回りくどかったり、難解な時もある)。

教材の内容の面白さ、というのは、勉強のモチベーション維持には大切な要素です。この本を使うと、今日はどんな話だろう、という感じで、楽しんでリーディングの勉強が出来ますので、TOEIC900点以降ぐらいのレベルで教材を探している方は、ぜひ読んでみてください。

ちなみに、こちらの対訳シリーズも、なかなか良いです

中身がよりニュース寄りで、文章がやや硬い印象はあります。あとレイアウトが「英文対照 天声人語」とは結構違うので、一度中身を見てから買ったほうがいいかもしれません。ただ、バックナンバーが安く手に入りやすいのでおススメです。