赤毛のアンを英語で読む面白さとメリットをより具体的に説明してみる(ネタばれアリ)

パブリックドメインの中でもピカ一に面白い

以前、英語の多読について書いたときに、おススメの小説として「Anne of Green Gables(赤毛のアン)」をご紹介しました。

上記のリンクはkindle版ですが、すでにパブリックドメインになっているので、探せば無料でも手に入れることが出来ます(kindle版も無料になる時がある模様)。

多読をするときに、赤毛のアンのような名作を選ぶと多くの利点があります。まず、本が入手しやすく、価格も安いこと(無料で手に入ることも多い)。また、日本語の素晴らしい翻訳も容易に手に入るので、そちらを参照しながら読むとさらに勉強になる(図書館にも絶対にある)。さらに、アニメシリーズも作られているケースが多いので、それを見れば、ストーリーの流れがすぐにイメージ出来る、という事が挙げられます。ちなみに、アニメの第一話は、youtubeで無料公開されています(制作会社が配信している著作権OKの物)。

上記のアニメの第一話で、主人公のアンと、保護者になるマシューが出会うシーンを見る事が出来ます。あとでも書きますが、この、馬車に乗って二人が家に向かうシーンは、物語のエッセンスが詰まっているので特に面白いです。小説は冒頭の掴みが非常に大切ですが、赤毛のアンはその点、パーフェクトだと思います。

私は学習の初期から、この本を繰り返し読んでいます。基本的には大人向けの小説なので、文章の難易度はかなり高いです。最初のうちは、ほとんど雰囲気を楽しむレベルでしか、読むことが出来ませんでした。ただ、英語学習が進むたびに改めて読むようにして、徐々に細かい部分まで理解できるようになりました。学習8年目の現在では、90%ぐらいの理解度だと思います(精読すれば95%ぐらいは行けると思うが、めちゃくちゃ時間がかかるのでやっていない)。

この、徐々に分かっていく感じも楽しいので、初心者の内から難しい本に挑戦するのも大いにアリだと思います(ただしストレスを貯めない様に注意)。似たようなやり方でリスニングの場合、例えば好きな映画のワンシーンを、英語の学習が進むたびに繰り返し見るのもおススメです。時間の経過とともに、リスニング能力の進歩を感じられるので、モチベーション維持に役立ちます。

話を赤毛のアンに戻すと、単語のレベルは英検1級レベルを部分的に超えていますし、文法もところどころ複雑です(基本的に小説の文法は難しい)。ただ、先ほど書いたように、翻訳やアニメが充実していますので、初心者の方でも、話が分からなくなるということは無いハズです。そういう意味で、多読に必要とされる「飛ばし読み」が非常にやりやすいので、この本は誰にでもオススメ出来ます。

なぜ面白いかを語るために、物語序盤を詳しく解説します

一言で言えば、この作品の面白さは、主人公アンの魅力的なキャラクターによって生まれています。加えて、物語の作りが洗練されているので、読者は飽きることなく本を読み続けることになります(ただし古い物語なので、話の展開は遅いと感じるかも)。

ここからはネタバレというか、物語の冒頭の内容をそのまま書いてしまうのですが、有名なストーリーですし、問題は無いかと思います。

第2章のアンとマシューが出会うシーンが超キャッチー

この本は結構長編で、全部で38章もあります(しかも続編等が10冊以上ある)。物語はアンの成長とともに進みます。その中でも、この第2章で、保護者の男性であるマシューが、アンと出会うシーンが良く出来ています。ここが物語の、最も印象的なシーンと感じる人も多いのではないでしょうか。

時は19世紀末。カナダの田舎で農業を営んでいる老齢の兄妹が、労働力を求めて孤児院から養子を取ることを決意します。労働力目当てなので、10歳ぐらいの男の子を希望していて、仲介してくれる人にもその旨を伝えています。しかし手違いで、女の子であるアンが汽車で送られてきます。

ちなみに、保護者兄妹の兄であるマシューは、ものすごい人見知りで、特に女の子が苦手です。という前提が語られてからの、マシューとアンの出会いがあるわけです。これは本当に上手な物語の導入だと思います。善良で内気なマシューは、女の子を恐れてさえいる。一方でアンは、自分が間違って送られてきたことを知らない。

駅で出会った二人は、マシューの家へ馬車で向かいます(手違いはまだ明らかにされないまま)。この馬車のシーンで、アンのエキセントリックなキャラクターが明らかになります。空想家で、一人で喋りまくり、同時にマシューに熱心に語り掛け、彼女はエネルギーに満ち溢れています。アンのマシンガントークは、笑ってしまうほど勢いがあるので、英語の文章を完全に読めなくても、雰囲気が伝わってくるはずです。

そして、アンが喋りまくるのと同時に、物語の舞台である、プリンスエドワード島の美しい自然が描写されて行きます。これら詳細な風景描写も、この物語の大きな特徴です。美しい自然の中で、孤児だったアンが伸び伸びと成長していく姿を、読者は物語の進行とともに楽しむことが出来ます。

なのですが、この風景描写に使われる英単語が、かなり難易度が高いです。ですので、花の名前とか気候の話が出てきた場合に、読み進めるのが難しいと思ったら、そこは一旦飛ばしてしまうことをおススメします。風景描写を味わうのは、英語学習が進んだ将来に取っておきましょう。

読者が引き付けられる要素が、随所にちりばめられている

アンはマシューの家に着いた途端、実は男の子が求められていたことを知らされます。そこでの、アンの嘆きの表現もすごい迫力です。マシューの妹で、こちらは厳格で真面目なマリラが、アンを慰めようとしますが、全くうまく行きません。

次の日、失意のアンを連れて、マリラがアンを孤児院に戻すべく、仲介をしてくれた人に会いに行きます。ここでまた馬車での会話シーンです。マリラはアンの不幸な生い立ちを知り、ひそかに同情を寄せます。そして、仲介者の家で、アンがまた過酷な運命に引き戻されそうになるのですが……。厳格なマリラが下した決断に、読者は涙するに違いありません(めちゃ良いシーン)。

全編を通して、優しくて内気なマシュー(兄)と、厳しく皮肉屋なマリラ(妹)の対比が、物語を面白くしています。マリラは凄い保守的なので、自由な発想のアンとはしょっちゅう衝突します。しかし衝突を繰り返すたびに、二人の距離が縮まっていくのも分かるので、読者はハラハラしながらも展開を楽しむことが出来ます。

他にも、面白い要素としては、アンは自分の赤毛をものすごく気にしています。空条仗助が髪形をいじられた時にブチ切れるのと同じぐらい、アンは自分の赤毛を馬鹿にされると、我を忘れて激怒します。おかげで、近所のボス格の女性に罵声を浴びせたり、学校のリーダー格の男の子と、敵対関係になったりします。

How dare you call me skinney and ugly? How dare you say I’m freckled and redheaded? You are a rude, impolite, unfeeling woman!”

(よくもまあ、私を痩せっぽちで醜いと言ってくれたわね。よくもまあ、私をそばかすだらけの赤毛と言ったわね。あなたは無礼で、無作法で、冷酷な女よ!)

と言う感じで、アンは基本的にものすごく気性が激しいです。私はこのシーンのおかげで、「How dare you 動詞~(よくもお前は~出来るな)」という言い回しが、脳に刻み込まれました。ちなみに、今この「How dare you」をネットで調べたら、環境保護で有名なスウェーデンのグレタさんが出てきて笑ってしまいました。彼女は確かにアンに似ているところがあると思います(特に気性が)。

ちなみに、「赤毛のアン」という日本語の題名をアンが知ったら、「How dare you~」という感じで激怒しそうな気がします。「私が気にしてるのに、よくも赤毛を題名に入れてくれたわね!」と言う感じで。

とりあえず、スマホかキンドルに入れておいてください

物語のごく序盤だけでこんなに語れるわけで、この物語は本当に内容が濃くて面白いです。

他にも、

親友のお母さんに最初は嫌われるけど、その親友の妹を喉頭炎から救ってむちゃくちゃ感謝される話とか、袖が膨らんだドレスが欲しいけど、マリラに拒否られてガッカリしていたところ、マシューが勝手にプレゼントしちゃう話とか、親友の親戚のお金持ちの老女を激怒させるけど、マシンガントークを披露して仲良くなっちゃう話とか、

私は特に好きです。

というわけで、ここまでレビューを読んでくださったわけですし、せっかくだから赤毛のアンを原文で読んでみませんか。と言っても、本を読むことを趣味にしている方は別として、長い物語を読み始めるタイミングは、結構難しかったりしますよね(しかも英語だし)。

なので、とりあえずスマホか読書用の端末に、この本をダウンロードしておくことをおススメします。きっとそのうち、読み始めるのに良いタイミングが訪れるハズですので。