「ELSA Speak」に「ELSA AI」(英会話機能)が追加されたのでレビューをします

現在はアーリーアクセスバージョンだが、感触はかなり良い

私は発音学習をするために「ELSA Speak」というアプリを1年以上使っています。独学者が発音学習を効果的に出来るので、画期的なアプリだと感じています。

最近、なんとこの「ELSA Speak」が「AIと英会話をする機能」を搭載しました。それが「ELSA AI」です。私はこの「ELSA AI」を使って今まで10回ほど長めの会話をしてみたのですが、なかなか感触が良いです。

現在はまだアーリーアクセスの段階で、8月の半ばごろに正式版がリリースされるようです。正式版になったときに仕様が変わるかもしれませんが、現在のバージョンでも十分英会話の練習に使えると感じています。

ちなみにアーリーアクセスは登録が必要ですが、以下から誰でも参加できます。

現在私は、英会話学習のために「speak」というアプリも使っています(「ELSA Speak」とは別のアプリ)。「speak」はChatGPTを利用しているので、AI相手でも自然な感じに英会話の練習が出来ます。人間相手の会話と全く同じというわけには行きませんが、学習用途ならば十分実用的だと感じています。

今回新たに出た「ELSA AI」もChatGPTを利用しているので、「speak」と機能的にはかなり近いです。ただ、細かい違いはあります。今回はこのアーリーアクセス版の「ELSA AI」を、「speak」と比較をしつつレビュー致します。

ChatGPTを英会話に活用する場合、AIを調整する必要がある

ChatGPTを触ってみたり、関連する動画を見たことがある方は、AIの受け答えの仕方について多少ご存じだと思います。ChatGPT単体を相手に会話をすると、こちらの質問に対して長すぎる答えを返してきたり、情報に間違いを含んでいたり、というケースがあります。

ですので、ChatGPT単体を相手に英会話の練習をする場合、利用者がかなり調整をする必要があります。例えば、事前に返答の長さを指定したり、単語の難易度を調整したり、という微調整が必要になります。ですので、無料で使えるメリットはありますが、ChatGPT単体を英会話学習に使うのは、現状では難易度が高いと感じています。

一方で英会話アプリの「speak」は、ChatGPTを英会話学習向けに最適化してくれるので、学習者は自分で調整をする手間を省くことができます。

AIをどのように調整するかで、アプリの特徴が出る

以下は比較のために以前作った表です。ChatGPTを利用して英会話学習をする時に、ChatGPT単体で使う場合と、アプリを介した場合を比べています。利用者が自力で調整する必要があるのか、それとも調整をアプリに任せるのか、という点が大きな違いになります。

※使い放題の料金を選んだ場合(もっと安いプランもある)

表の真ん中にある「Hachi」も、ChatGPTを利用した英会話サービスです。「Hachi」は通話アプリの「LINE」のフォーマットを使う事で、格安の利用料金を実現しているようです。ただ、上の表にあるように、調整の程度が「speak」ほどではありません。

つまり「Hachi」には、利用者が調整をしなければならない部分がある程度残っています。具体的には、AIの発言の長さや、単語の難易度をこちらが指定しないと、使い勝手がイマイチになってしまうケースがあります。利用者が微調整できる事はメリットにもなりうるのですが、面倒に感じてしまう人も多いはずです。

というわけで、私は「speak」の調整力に魅力を感じて、月額料金約2500円を払って利用をしています。使い放題では無いのですが、月に約30回、毎日15~20分ぐらいは会話が出来る計算です。オンライン英会話に比べると十分安いと言えます。加えて「speak」は、復習をするための機能も充実しているので、英会話学習用アプリとして完成度が高いと感じています。

「ELSA AI」は「speak」に近い調整をChatGPTに施している

「ELSA AI」と「speak」を両方使ってみて、両方ともAIの受け答えが洗練されているという印象を持ちました。それぞれChatGPTに対する調整が十分施されているので、利用者は細かい事は気にせずに学習に専念出来ます。

以下は、英会話学習に対する、ChatGPT単体と、それぞれのアプリの使い勝手を比較した表になります。

ChatGPT
(自力調整)
HachiELSA AIspeak
①人間と同じように会話できる※
②アドバイスや総評をくれる
③あいまいな発音を聞き取る
④細かくカスタマイズ出来る
⑤オンライン英会話より安い料金◎(無料)
⑥学習用に最適化されている
※人間同士の会話と全く同じではないが、一問一答という形なので違和感はあまり感じない

①「人間と同じように会話できる」に関しては、そもそもChatGPTの能力が高いので、どれも質は高いです。ただ、「ELSA AI」と「speak」はしっかりと調整されている分、よりスムーズに会話が出来る印象です。

②「アドバイスや総評をくれる」に関してですが、ここは「speak」の強みが少し目立ちます。会話中に学習者が発したすべての内容に対して、AIが修正した文章を提案してくれます。これが、復習をする時に非常に役立ちます。一方で「ELSA AI」の方は、会話の後に総評をまとめてくれます。以下のように発音・文法・語彙の観点からアドバイスが細かくもらえます

これも有用なのですが、会話自体の復習には少し使いにくい印象です。また、「speak」は会話の内容が保存されて後から見直せるのですが、「ELSA AI」は今のところ見直しが出来ません(直後の見直しはもちろん出来る)。ただ、ここら辺の機能は正式リリースされたあとに、改善される可能性があると思います。

③「あいまいな発音を聞き取る」は、「ELSA AI」と「speak」ともにかなり優秀です。学習者があまりうまく発音できなくても、こちらが言いたかった単語を高い精度で認識してくれます。恐らく話の内容をAIが分析して、こちらが使ったと思われる単語を推測しているのだと思います。

④「細かくカスタマイズ出来る」に関しては、それを可能にした場合の良い面と悪い面があると思います。「ELSA AI」と「speak」はカスタマイズの余地が小さいですが、その分アプリに段取りをお任せ出来るので、使いやすさが増しています。ただ、もっとカスタマイズしたい、と思う利用者もいるでしょう。そこに今後対応するのかどうかは、未知数だと思います。

一応、「ELSA AI」と「speak」にも、自由に状況を設定して会話をするモードがあります。「speak」は、「学習者」及び「AI」の役割と、会話のテーマを自由に設定できます(設定を文字入力する)。

「ELSA AI」も変更できるのは似たような範囲ですが、AIとの会話を通して環境を設定する仕様なので、もう少し細かいリクエストも出せそうな感じがします。この部分は説明がちょっと難しいので、正式版がリリースされたら細かくレビューするかもしれません。

⑤「オンライン英会話より安い料金」に関して、「speak」は使い放題だと月額4000円近くかかります。ただ、私の使い方のように毎日15~20分ぐらいの利用なら、月額2500円ぐらいで済む計算になります。

⑥「学習用に最適化されている」に関してですが、「ELSA AI」と「speak」は、本当によく調整されていると思います。オンライン英会話のような自由度は無いですが、これらのアプリで一問一答の会話を続けていけば、確実に英会話の実力を上げることが可能だと思います。

ということで、「ELSA AI」の性能は「speak」に近い印象でした。しかも利用料金は「Hachi」に迫るような安さですので、今後シェアを伸ばしていきそうな予感がします。

「ELSA AI」がこの分野の競争を活性化してくれるはず

私が子供の頃、ゲーム機本体が次から次へと発売されて、それはさながらゲーム会社による戦国時代を見ているようでした。価格や性能、ゲームソフトのラインナップによって、ユーザーをどれだけ引き付けることができるのか、当時激しい戦いが繰り広げられました。一時天下を取ったように見えるハードでも、次の世代ではシェアをごっそりと奪われたりしました。その過程で、ハードやソフトの性能、使い勝手等が洗練されて行きました。

「ELSA AI」の出現によって、「AI英会話アプリ」の戦国時代が始まるかもしれません。そのことによって、性能や使い勝手が良くなると同時に、利用料金が安くなるならば利用者としては嬉しいです。AIに関するアプリには、いろんな企業が莫大な投資をしています。突然アマゾンやグーグルあたりが、この戦いに参入してくる可能性も十分あると思います。

当面私は「ELSA AI」と「speak」を併用しようと思っています。定期的にそれらのレビューをしつつ、この分野の動向を探って行きたいと思います。