発展途上のジャンルだとは思うが、現状でも十分使えると感じた
英会話の勉強にAIが使えるのか、という事に関して、以前記事を書きました。
上記では、英会話の勉強にChatGPTなどのAIを利用している方の動画を参照させて頂きました。そのほか、ブログ記事なども参照した結果、現状ではオンライン英会話の代わりにはならないだろう、という結論になりました。ただ、近いうちに良いアプリが出来るだろう、という予測をしました。
ですが、その後もう少し調べたところ、すでにChatGPTを活用している、英会話学習アプリが存在している事を知りました。それが「speak」というアプリで、一週間お試しが出来るので使ってみました。
その感想を短くまとめると、
AIの反応がかなり良いので、十分英会話の練習に使える。まだ発展の余地はたくさんあると思うが、料金もそこまで高くは無いので、とりあえず続けてみたい。
という感じになりました。
前回の記事では、AIを使った英会話練習アプリに期待する事を、箇条書きにしました。それらはこの「speak」で、すべて満たされているわけではありません。以下に分かりやすいように表にしてみます。
アプリに期待する事と「speak」が実現出来ている事の比較
期待する事 | speak | 重要度 |
人間と同じように会話できる※1 | 〇 | 高 |
AI先生のアバターと会話できる | ✖ | 中 |
アドバイスや総評をくれる | 〇 | 高 |
日本語で質問が出来る | ✖ | 低 |
学習レベルを自動調整※2 | △ | 中 |
あいまいな発音を聞き取る | ◎ | 高 |
細かくカスタマイズ出来る | ✖ | 中 |
オンライン英会話より安い料金 | 〇 | 高 |
※2 学習者の会話内容によってAIの受け答えが変わるので、それが難易度の自動調整とも言える
こう見ると、実現できていない事がたくさんあります。ただ今回は、これらの項目の重要度を併記してみました。すると、本当に必要と思われる優先度の高い要素に関しては、この「speak」は結構実現出来ている事が分かります。
特に「人間と同じように会話できる」と「あいまいな発音を聞き取る」という二つの要素は、かなり重要です。ある意味これが出来ていれば、英会話の練習アプリとして、必要条件を満たしていると言えます。現状で十分と感じる人もいると思いますし、今後のアップデートでさらに便利になるのは間違いないでしょう。
会話の形式はオンライン英会話と似ている
「人間と同じように会話できる」に関しては、現状では一問一答のような形なので、完全にリアルな会話を実現出来ているとは言えません。ただ、「先生が話す→生徒が答える→それに対して先生が答える」という固定された繰り返しは、私がオンライン英会話でよく経験した形です。
本来の人間の会話はもっと自由だと思いますが、英会話の学習でそこまでは必要無いと思います。これ以上を求めるならば、話の間(ま)や表情、言葉の勢い、などの要素まで考えなくてはならなくなります。それらは人間同士でも、母国語でのコミュニケーションの時に、ようやく使いこなせる要素です。しかし恐らく、そこら辺もAIは、近いうちに習得してしまいそうな気もしますが。
特筆すべきはAIの聞き取り能力(下手な発音も聞き取ってくれる)
個人的には、AIの受け答え以上に感心した部分です。私は発音が苦手で、elsa speak(発音学習アプリ)を使って発音練習を続けています。
だいたい11か月ぐらいやっているのですが、それでもAIにダメ出しされる事が多いです。ですが、この「speak」のAIは、こちらの下手な発音をかなり正確に聞き取ってくれます(日本人っぽい発音を聞き取ってくれる)。ですので、自分が言ったことが全然違う意味に解釈されてしまう、ような経験は、一週間使っている中ではほとんどありませんでした。
これはどうやら「speak」が優秀というよりも、OpenAI(ChatGPTの開発会社)が提供している音声認識機能のおかげのようです。
「speak」は、AI講師の受け答えにChatGPTを利用しているのですが、それに関して、開発者の方のインタビューを以下から読めます。
上記のインタビューの中で、音声の聞き取りのために、OpenAIが提供する「Whisper」という技術を使っているとあります。ここで私は、
音声聞き取り技術は、googleが無料で提供している物もある(評判も良かったはず)。
ならばspeakを使わなくても、自分でChatGPTをカスタマイズすれば、ほぼ同様の事が出来るのではないか?
多少不便だとしても、無料で使えるならばそっちの方が良いかも。
と考えて、自力でどこまでやれるのか、ちょっと試してみました。その感想としては、
ブラウザのクロームに、googleが提供する音声認識の拡張機能(Voice in)を入れれば、speakと同じくらい聞き取ってくれる
適切な命令をChatGPTに入力すれば、AI講師の受け答えもspeakに近い物に出来る(アドバイスももらえる)
ただし時々不具合が出たり、命令の調整に面倒くささを感じる
という感じになりました。
不具合が出たり手間がかかる、という部分は、結構無視ができない問題です。ChatGPTは無料で使うことができますが、上手く活用するには手間がかかりますし、問題が出たらその都度、利用者が対処しなければなりません。
一方でspeakでは、不具合は今のところ経験していません。英会話のお題を用意してくれて、会話の最後に自動で総評とアドバイスも出てきます。そのような細かい要素が、勉強のモチベーションを保つ為に役立つはずです。speakは学習者が面倒なく、英会話の勉強に集中出来る環境を整えてくれているので、そこにお金を払う価値があると私は思いました。
speakの利用料金と今後の展望について
単純に比較するのは難しいですが、speakの利用料金は、たいていのオンライン英会話よりは安いです。ただし、ネイティブキャンプは例外で、話し放題で6480円とめちゃくちゃ安いので、魅力があります(話し放題でこの料金は他に無い)。
面白そうなのと気楽さのために、私は当分「speakのAI先生」を利用するつもりですが、今後、AI先生とリアル先生のすみ分けはどうなるのでしょう。ここら辺の関係性も興味深いところです。
ちなみにですが、私の場合、人間相手のオンライン英会話は体力の消耗が激しかったです。気疲れの部分も大きいと思うのですが、1コマ25分の授業を一日2コマ取ると、「疲れ果てた状態」になっていました(AIに無い楽しさも、もちろんあるのだが)。
speakの料金体系は以下の通り(2023年4月現在)
プラン | 月額 | 年額(月額より安くなる) | クレジット |
プレミアム | 1800円 | 12800円(月額1067円) | 1000 |
プレミアムプラス | 4000円 | 29800円(月額2483円) | 10000 |
プレミアムunlimited | 6800円 | 44800円(月額3733円) | 無制限 |
表の右端、クレジットというのが、ちょっと分かりにくいのですが、AI講師が話した単語数によって消費されるポイントのようなものです。選んだプランによって、得られるクレジットが違います。私の場合、20分ぐらい話すと約300クレジットを消費します。つまり、一番安いプレミアムプランだと、3日ぐらいで尽きてしまう計算です。
以上の事から、毎日の勉強に組み込むならば、少なくともプレミアムプラスに入る必要があります。20分毎日話すとして、約330クレジット×30日(一か月)≒10000クレジットぐらいの計算になります。
アウトプット(英会話の実践)のためには、インプット(座学など)が大切
実践的な英会話を毎日20分ぐらいやるのは、今の私にはちょうど良いと思っています。私は英検1級の2次試験対策をしていた時に、英会話の勉強法についてはそこそこ調べました。その時に、インプット(座学や暗唱)7割に対して、アウトプット(実際の英会話)3割ぐらいが良い、という記事をたくさん見て、割と納得しました。
7:3の割り合いにそこまでこだわる必要は無いのですが、重要な点は、「英会話の上達のためには、頭の中に会話のストックを貯める必要がある」という事です。ストックが無い状態だと「何を話したらよいのか分からない」という状態になってしまいます。
個人的にインプットに関しては、以前から英語のハノンや短い文章の暗唱をやっています。そうして頭の中に貯めた情報を、実際の英会話で使うことによって、徐々に応用力を高めて行くのがアウトプットの目的です。
ということで、私はプレミアムプラスの年契約を選びました。これだと月額が約2500円になり、まあまあ使いやすい価格帯だと思います。ただ、私はこの手のサービスは、今後もっと安くなるのではないか、と考えています。
根幹のシステム(ChatGPT)は、ほぼ無料で誰でも活用できる
先ほど、ChatGPTを自力でアレンジした話を書きましたが、工夫をすればほぼ無料で、speakのサービスに近い事が出来るわけです。実際にChatGPTを利用して、英会話の練習環境を無料で提供している物や、LINE経由でサービスを提供して、価格を抑えている物もすでに存在しています。以下はそのリンクです。
上記の「AI先生」は無料で、それにしてはちゃんと会話できました(ちょっと使いにくいし、AIの声が良くないけど)。
英会話「Hachi」は月額550円で無制限。LINEを利用して、おしゃべり感覚で使えるイメージか。私は使ったことが無いのですが、これで十分という人もいそう。
後日「Hachi」も使ってみたので、比較してみました。
今後、競争が激しくなるのは間違いが無いと思います。それに伴って、料金が下がり、サービスも良くなると有難いです。
speakも改善の余地はたくさんありそう
まだ10日ぐらいしか使っていないのですが、speakのAI講師は素晴らしいです。ただ、それ以外の機能は現状では利用していません。もう少し具体的に言うと、このアプリは大まかに以下の3つの要素で構成されています。
①ネイティブの先生による、文法の授業の動画(日本語字幕付きの英語音声で解説)
②習った文法を使って、文章を作る練習(音声認識が微妙)
③練習で作った文章を応用して、AI先生との英会話(ここだけ有料)
①→②→③と言う流れで英会話を総合的に勉強しましょう、と言うのが、このアプリが提案する学習のスタイルなのだと思います。
この中で①と②は無料で使うことが出来ます。ただ、無料だけあって、あまり魅力的なコンテンツとは言えません。①の動画はyoutubeでもよく見かけるようなものですし、文法の勉強は座学でやった方が、圧倒的に効率が良いと私は思います(問題集を解くなど)。
②はアプリの音声認識があまり良くありません。②の部分にはChatGPTもしくはwhisperを使っていないのかもしれません(実際どうなのかは不明)。②では発音学習も出来るのですが、聞き取り能力が低いのと、アプリの反応が遅いので、あまり実用的ではない感じです。ということで、私はelsa speak(発音練習アプリ)を、speakとは別に当面は続けて行く予定です。
実質、③のAI先生がこのアプリの本命で、他はおまけと考えた方が良いかもしれません(だからこその有料)。
speakを一か月も使えば、またいろんな要素が分かってくると思います。5月末あたりに一度、中間レビューをしたいと考えています。
※追記:約一か月利用した時点でのレビュー(かなり良い)