TOEIC(R) L&R TEST 990点突破ガイド 英文法・語彙編のレビュー

TOEICで本当に満点(990点)を取りたい場合は、役に立つはず

ミスマッチが起きると、本の評価が下がることがある

この本は旧版があるようで、恐らく内容はほとんど同じみたいです。その旧版も含めて、アマゾンのレビューの数が少ないし、星の数もイマイチです。ただ、語学の参考書は評判がイマイチでも、良い本が結構あると私は思っています。

それは何故かと言うと、学習者と参考書のマッチングが、うまく行かないケースが多いからです。難易度が高い本は通常、初中級者には適していません。また、本の内容がマニアック過ぎて、万人には受け入れられないケースもあります。結果としてミスマッチが起きて、不満を持った学習者のレビューによって、本の評価が下がることがあります。この本も、そういうミスマッチが起こりやすい本の一つだと思います。

「990点突破」を本当の意味で目指している

この本は、題名に「990点突破」と書いてあります。それで一応、上級者向けである事がはっきりと分かります。ただ、他のTOEICの参考書では、「990点」という言葉が別の意味で使われることがあります。単に「難易度が高い、もしくは上級者向け」という意味で「990点」を使っているケースがあるのです。というか、一般的にはそのケースの方が多いのではないでしょうか。

なのでこの本のタイトルをパッと見て、「990点を目指してはいないが、800~900点後半を目指している学習者」が、この本を手に取る可能性があります。その場合、ミスマッチになってしまうかもしれません。というのも、この本は下手したら「990点」ではなくて、「995点」とか、「1000点」を目指している人のための本だからです。

何言ってんの? と思われるかもしれませんが、具体的に説明をします。現在私は、TOEICの990点を目指して勉強をしています。その場合、リーディングでほぼ満点を取ることが990点取得の鍵になります(リスニングは比較的満点を取りやすい)。そして、リーディングでほぼ満点を取るためには、「試験でギリギリ出るか出ないか」という難易度の問題を、集中して勉強する必要があります。

よって、すでにリーディングで満点近くが取れていて、最後の一歩を目指す人は、ほとんど本試験では出ないような難易度の問題を大量にこなすと、ある意味効率が良いわけです。しかしその為の問題集を作っても、ほとんど需要が無いでしょう。恐らく満点を目指している人の多くは、趣味か仕事関係でTOEICを受けている人だと思います。その人数は決して多くないはずですが、そんなニッチな需要に、有難いことにこの本は答えてくれているのです(なんでだろう)。

英検1級の試験範囲を思い出させる、語彙の難易度

結果として、この本はTOEICの試験範囲を大幅にはみ出しています(難易度的に)。この本に出ている問題に類似するものが、例えば直近のTOEICで出る可能性は、極めて低いと思います。ですので、この本に批判的なレビューがつくのも理解できます。たくさんの人に大きなメリットのある本ではありません。ごく限られた人の、ごく限られた需要を満たすために、この本は作られたのだと私は感じました。

ここで私の、この本の問題正答率をご紹介したいと思います。ちなみに、私の現在の実力としては、公式問題集ぐらいのレベルで、part5は多くてもミスは二つぐらいです(28/30以上)。

TOEIC(R) L&R TEST 990点突破ガイド 英文法・語彙編の正答率

文法パート 66/100(66%)

前置詞パート 20/50(40%)

派生語パート 31/50(62%)

一般語彙パート 39/50(78%)

多義語パート 67/100(67%)

トータル 223/350(63%)

という結果になりました。ちなみに、この本には上記の問題数に加えて、part6の問題が少しと、欄外にオマケの問題も付属しています(上記の計算からは除外している)。

トータルの正答率が63%ですので、かなりてこずった、という感じが伝わると思います。前置詞が弱いのは納得の結果です。句動詞(動詞+前置詞or副詞)として暗記しないと、答えられない問題がたくさんありました。これは英検1級の語彙問題を対策するときも、捨てていた部分です(覚えるものが多すぎるので)。

また、一般語彙と多義語で比較的点数が取れています。これは、英検1級のために語彙を増強していた結果です。ですので、TOEICのレベルをはるかに超えた語彙、多義語が出題されている、という事も分かります。

加えて、問題文に使われている全体の単語が難しい上、文法も複雑です。ですので、問題文の意味が正確に取れなかった結果、正しい答えを選べなかったものも、かなりありました。経験上、本試験のpart5では、問題文は一瞬で読めるものがほとんどです。ここも、レベルが大きく異なっていることが分かります。

目的がはっきりしているので、あまりストレスにはならない

実力とレベルが離れている参考書をやると、ストレスが溜まる事が多いです。ただ、正答率が63%というのは、ギリギリ、嫌にならないでやれるレベルかもしれません。そういう意味で言うと、この本の難易度は、私にとってはちょうど良いのかもしれません。

TOEICの出題範囲を逸脱していることも、例えばこれがTOEICの模試ならば、かなり不満がたまそうな部分です。模試全体の難易度を上げるために、語彙のレベルを上げている模試は結構あります。ただ、それをやり過ぎると、その模試はTOEICに似ているけれど、全くTOEICではない模試になってしまう可能性があります(本試験との違いが大きくなる)。

ただ、この本は目的を絞って、あえて難易度を極端にしている印象があります。実際、本文中に著者からのメッセージがあり、「かなりハードだったでしょう」とか「どうかくじけずに辛抱強く」みたいな励ましがあります。なので、間違って当然、というレベルなのだと思えば、そこまでストレスはたまらないはずです。

ちょっと不満を言うとしたら、問題ごとに示されている難易度表記に関してです。下はTOEIC730点レベルから段階的に、800点、860点、900点、950点と5段階になっています。ただ、私の感覚で言うと、ほとんどの問題が900か950点レベルと言っていいと思います。そうじゃないと、私の63%の説明がつきません。特に問題にはなりませんが、著者の方のスパルタ感が伝わって来る部分だと思います。

こんな本を出してくださって、ありがとうございます

先ほども書きましたが、TOEIC満点を目指している人かなり少ないはずです。それなのに、そこをターゲットにしたような本を作ってくださって、感謝したいと思います。本文中の著者の方のメッセージを読んで、かなり情熱をもってこの本を作られたのではないか、と感じました。割と利益は度外視なのかもしれません。

本の作りは基本的に丁寧です。解説が足りないというレビューもあって、それも理解は出来ます。難易度が高いので、すべてを本文中で解説するスペースは無い、という事かもしれません。解説だけで理解が追い付かなければ、各自が文法書やネットで調べる必要があり、それは難しい本に取り組む場合、共通してやる事のような気もします。

TOEICの満点を目指すのは、多少不毛な印象もあるかもしれません(実益は小さいかも)。ただ、英語を趣味として考えた場合、非常にやりがいのある目標だと私は感じています。些末な文法のルールを知って、結構ワクワクしてしまう時があり、これはまさに趣味の世界です。というわけで、今回のような本を見つけるのも、楽しみの一つになりそうだと思いました。一部の人に超オススメです。