「読解特急3 長めの記事編」と「読解特急4 ビジネス文書編」のレビューをします

これで読解特急シリーズ6冊をコンプリートしました

TOEICの問題集として有名な「特急シリーズ」を最近やっています。特急シリーズでは多種多様な本が出ていて面白いのですが、どれを選んでやればいいのか、学習者としては迷ってしまう事も多いと思います。というのも、タイトルだけではその難易度や、扱っている範囲が分かりにくい物も多いからです。

ただ、そのシリーズの中で、part7を専門に扱っている「読解特急シリーズ」はコンセプトが明確です。基本的にはpart7に出てくる問題を、ひたすらこなして行くシリーズになっています。このシリーズでは6冊本が出ていて、今回私はすべてをコンプリートしました。表にすると以下のような感じです。

内容の概略難易度
読解特急 1駅1題part7全般本番と同程度
読解特急2 スピード強化編短い文書のみ本番と同程度
読解特急3 長めの記事編英検1級に近いかなり難しい
読解特急4 ビジネス文書編メールや手紙本番と同程度
読解特急5 ダブルパッセージ編複数文書問題本番と同程度
読解特急6 トリプルパッセージ編複数文書問題本番と同程度
※タイトルのリンクからレビューのページにとびます

読解特急3を除いて、すべてが本番と同程度の難易度に感じました。問題の質も非常に高くて、TOEIC本番の問題と違いをほとんど感じませんでした。この事は、実は結構凄い事だと思います。

私は今まで結構な数のTOEIC模試を解いていますが、part7の問題で本番と同じような質・難易度の問題を作ることは、プロの先生方にとっても難しい事のようです。問題の難易度が意図せず高くなってしまったり、本番の問題と距離を感じるような物を載せている模試が結構あります。

これは私の個人的な印象ですが、「本番を再現!」と本の帯に書いてあったり、「模試の内容が本番にそっくりでした」とアマゾンのレビューにあっても、あまり信用は出来ないです。評判が良くて売れている模試でも、本番とは難易度、もしくはテイストが違う事がよくあります

ですので、読解特急のシリーズは、難易度や出題傾向に関して、かなり配慮がされて作られている事が分かります。TOEICの専門家である3人の有名な先生方が、協力してこのシリーズを作っているので、このことが実現できたのではないかと思います。

旧形式時代の問題が多数含まれているが、今でも十分通用する

読解特急のレビューで毎回書いているのですが、このシリーズは、元になる本が2016年にTOEICが改訂される以前に発行されています(旧形式版)具体的には、読解特急3は2011年、読解特急4は2012年の発行です。

それらの改訂版として、新形式対応版がそれぞれ2022年、2021年に出版されています(なぜか順番が前後している)。今回私はその新しい方をやったのですが、それぞれの本には、旧形式版の問題がかなりの割合でそのまま収録されています。

ですが、現在のTOEICの問題と、なんら違いを感じませんでした。多くの模試が実現できていない、「本番そっくり」をむしろ実現しているとさえ感じました。ということで、個人的には2011年当時と、今のTOEICは内容的にそこまで変わっていないという印象があります。

「最新の傾向を反映したTOEIC模試、問題集」という売り文句を見かける事は結構多いです。その「最新の傾向」は確かにあるのですが、多くの学習者にとっては些細な問題だと感じています。細かい違いに対応したからと言って、点数が大幅に上がるという事はありません。点数につながるのは結局、基礎からしっかりと積み重ねた英語力だと思います。

ということで、模試や問題集は発行年の新しさよりも、その品質に比重を置いて選ぶことをおススメします。古い本だと中古で安く手に入ることも多いので、コスパもかなり良くなります。

読解特急3だけ、なぜか異質に難易度が高い

さんざん読解特急が「本番そっくり」だと褒めたのですが、上の表でも書いたように「読解特急3」だけは、なぜか非常に難易度が高かったです。個人的には読解特急3の問題は「英検1級の長文問題」にかなり近いと感じました。

TOEICの問題は基本的に「架空の世界の話」から作られています。つまり、現実に起こったことや実在の企業・人物が問題の文章に出てくることはありません。一方で、英検1級の長文問題は、実際のニュースや、歴史・文化の記事から出題されます。そして、この「読解特急3」の問題も、なんと事実に基づいた情報で問題が作られています。

特急シリーズ全般に言える事なのですが、恐らく、あまり計画的に本が出版されていません。ですので、読解特急も1から6に渡って、そこまで統一性を感じません。「今回は上級者向けに作ってみようか」という先生方の気軽なノリで、「読解特急3」だけが難しくなったのかもと私は勝手に想像をしています(本の内容は極めて真面目ですが)。

TOEICだけではなく、現実世界の記事も読むべきだと思った

読解特急3の問題文章量が多いです。単語と使っている文法の難易度も高めです。ですので、TOEICとはかなり雰囲気が違います。そして、事実と関係した情報を使って問題を作っているので、単純に読み物として楽しめる物が多かったです。

TOEICの問題はあくまでも学習用で、難易度が調整されています。学習目的には最適だと思いますが、現実世界のニュース記事等に比べると、その内容に結構違いがあります。ですので、TOEICで読解能力を高める事が出来たならば、どこかの段階で、現実世界の文章を読む量も増やすべきかもしれません。そちらの文章の方が面白いのは確かですし、有益なことも多いでしょう。

という感じに、私はこの読解特急3をやる事によって、リーディングの学習方針に対して考える所がありました。TOEICを中心に勉強している上級者の方は、是非この本をやってみて欲しいと思います。良い気分転換にもなるはずです。

一方で、初中級者の方にとっては、この本は難しすぎると思います。1問5分で解きましょう、と本文内に記述があるのですが、私は平均で7分弱かかって解きました。全100問のうち、ミスは4つだったのですが、5分以内で解くならばミスだらけになったはずです。

私は最近、TOEIC本番のリーディングで5分ぐらいは余すことが出来ています。それでもこの本の問題には時間が足りませんでした。恐らく、この本の問題を5分で解けるならば、本番で10~15分は時間が余るはずです。それは、満点を連発している、この本の著者の先生方のようなレベルになるはずです。

そう考えると、読解特急3は「TOEIC」という名を冠するには、ちょっと酷いレベルで難易度が高いと思います。初中級者の方が知らずに買って、面食らったケースもあるはずです。他の読解特急では見事に難易度が調整されているのに、どうしてこうなったのかひたすら謎です。

一方で読解特急4は安心の本番クオリティ

読解特急3が衝撃の難易度の高さだったので、かなり細かく書いてしまいました。一方で、読解特急4はシリーズ内の他の本と同様に、本番に近い内容で、質の高い問題が揃っています。上級者の方ならばスラスラと読めて、選択肢で迷うこともあまり無いはずです。私もほぼ時間内に解けて、103問中3ミスでした。

解説が丁寧で、しかも納得の行く内容です。この「解説が納得の行く内容」という事も、当たり前のようで、他の模試だと実現されていない事が結構あります。答えに疑問が残るような問題は、たいてい、解説もすっきりしない内容になります。個人的に「良い問題は解説しやすいが、そうでない場合、解説も書きにくくなる」のではないか、と少し意地悪く考えています。

初中級者の方は、公式問題集や、読解特急(3を除く)の文章をスラスラと読めるようになるまで、時間をある程度空けて、繰り返し解くとかなり実力を底上げ出来るはずです。

今後も気になった特急シリーズをやっていく予定です

読解特急の6冊すべて、クオリティが高くて良い印象でした。読解特急3だけ、ちょっと異質でしたが、それも質が高かったので学ぶところが大きかったです。今のところ特急シリーズでハズレに当たったことが無いので、今後も気になった本を試してみて、レビューをする予定です。

ちなみに既に、以下の本を買ってあります。

この本の帯に「スゴイ著者8傑入り!」という記載があり、その下に「花田徹也・神崎正哉・TEX加藤・ヒロ前田・森田鉄也」と有名な先生方の名前があるのですが、なぜか8傑と書いておいて、5人しか名前が記されていません。こんなところにも、特急シリーズのややテキトーな所が現れている感じがして、ちょっと面白かったです。前にもご紹介しましたが、以下の一覧表も雰囲気が出ていますムリヤリまとめている感)。

引用元:https://x.gd/VpIZ8