2023年にTOEIC「新形式模試はじめての挑戦」「標準模試1」「標準模試2」をやったレビュー

よくある事だが、本のタイトルに似合わず難易度がだいぶ高い

私は今まで、結構な数のTOEIC模試のレビューをしていますが、その多くがTOEIC本番や公式問題集よりも難易度がだいぶ高いです。なぜそうなっているのか、理由はよく分かりません(いろいろ想像は出来るが)。今回扱う3つの模試も、やはり難易度が高め上級者の「高地トレーニング向け」となっています。

今回、これらの3つの模試をまとめて扱う理由は、同じ出版社から出ているシリーズである、という事もありますが、それぞれの本のボリュームが少ないからです。1冊に付き1つの模試が収録されていて、その分、料金も抑えてあります(定価約1000円)。1冊に3つの模試を収録して3000円という模試は結構ありますので、今回の3冊は標準的な価格かと思います。

先に今回の3つの模試について短くまとめる

難易度が「はじめての挑戦」向けではないし「標準」でもない。特にリスニングの難易度が高めで、基本的には上級者向けの模試。問題の質はとても良いが解説はシンプルなので、初中級者の方には全くおススメ出来ない。

と言う印象を受けました。

先生方は、学習者のモチベーションの脆さ(もろさ)を考慮してくれない

シリーズとしては「新形式模試はじめての挑戦」が一番最初に出版され、その次に「標準模試1」、「標準模試2」と続きます。この中で最初の「新形式模試はじめての挑戦」が最も難易度が高いです。

この本の序文には「本誌の模試は難易度が高めに設定されています」とあり、「初中級者の人には少し難しすぎるかもしれません」とも書いてあります。さらに「解けない問題がたくさんあったとしても落ち込まないでください」と書いてあるのですが、実際に初中級者の方がやった場合、落ち込むケースがあると思いますし、モチベーションを失ってしまう可能性があると思います。

学習者にとって、モチベーションの維持は非常に大切です。難しい模試でも、やり通せば学習効果はあると思いますが、そこでストレスを貯めない様に気を付けてください。学習の意欲を失ってしまったら、元も子もありません(私もこの部分でずっと苦労しています)。

他の模試で「初中級者向け」と分かりやすく表記している物があるので、模試の難易度に関して心配な方は、そういう物を選ぶか、公式問題集をやるのが無難です。以下は私の模試のレビュー一覧です。

上記のリストの中で、初中級者の方に特におススメ出来るのは「究極の模試600問+」と「世界一わかりやすいTOEIC L&Rテスト総合模試1」です。

上記の模試は難易度が上手く調整されています。また、解説が非常に丁寧なので「模試を繰り返し解く」という勉強方法にも適しています。

難易度的には「公式問題集」や「韓国模試の翻訳版」が最も本番に近いです。ただ、こちらは解説がかなり簡素なので、ある程度基礎が出来てから取り組んだ方が良いかもしれません。

特にリスニング問題が聞き取り辛く、内容も複雑で難しい

今回の3冊の、私の得点率をご紹介します。

新形式はじめての挑戦

リスニング  91/100 part2ミス2 part3ミス5 part4ミス2

リーディング 95/100 part5ミス1 part6ミス1 part7ミス5

標準模試1

リスニング  99/100 part4ミス1

リーディング 96/100 part5ミス2 part6ミス1 part7ミス1

標準模試2

リスニング  97/100 part2ミス1 part3ミス1 part4ミス1

リーディング 95/100 part5ミス1 part6ミス2 part7ミス3

あくまでも一つのサンプルですが「新形式はじめての挑戦」のリスニングが、特に難しい事が点数にも現れていると思います。標準模試1・2のリスニングでは点数が取れていますが、シリーズを通して類似している難しさを感じました。

まず、単純に英語の音声が聞き取り辛かったです。これは、音質が悪いという意味ではありません。ネイティブ向けのドラマやニュースを聞いているときに感じる、音の消失や短縮がほんの少しだけ含まれているようなリスニング音源でした。ですので、細部まで聞き取るのはかなり難しかったです。

また、一つの文章にたくさんの要素が詰め込まれていて、内容が複雑な問題も多かったです。同じ内容を日本語で聞いたとしても、一発では理解できない人が結構いるのではないか、と感じた問題もありました(方角とか数字が絡む物など)。

というわけで、初中級者にはキツ過ぎる内容です。一方で、高地トレーニング向けとしては、良い素材だと感じました。この模試をやった事で、音の短縮や消失の勉強をもっとしっかりやりたい、と個人的には思いました。

難しいのに、解説が簡素なのが残念

これは公式問題集を始めとして、多くの模試で共通している事なのですが「リスニング問題の解説」は「解答者が英語をすべて聞き取れている」という前提で書かれている事が多いです。その場合、問題文と選択肢の論理的なつながりが主に解説される形になります(今回の模試もその形)。

ですが、実際にリスニングで学習者が苦労をするのは、「スピードが速くて聞き取れない部分があった」とか「単語力が不足していて、全体の意味がしっかり取れなかった」というような事ではないでしょうか。

その場合、求められる解説としては「2行目のこの部分は音が短縮されていて、聞き取り辛くなっている」とか、「この単語はやや難易度が高いですが、出題される可能性が高い」というような物だと思います。しかし、このような学習者のミスを想定したような解説は、あまり多くないようです。

今回の模試のリスニングは、音の短縮や消失が多かったので、特にその部分の解説が欲しかったと感じました。恐らくかなり手間がかかるので、リスニングの音の詳細にまで解説を付けるのは、難しい事なのでしょう。

ちなみに、上でご紹介した「世界一わかりやすいTOEIC L&Rテスト総合模試1」では、リスニングの聞こえ方をかなり詳細に解説してくれています(聞こえ方のカタカナ表記まである)。初中級者の方には特に有用だと思いますが、ここまで解説をしてくれる模試は、他にはほとんど無いと思います。

リーディングは本番と同じぐらいの難易度

私は結構ミスをしてしまっていますが、リーディングの方は「本番を再現している」と言ってもいいぐらいの、ちょうど良い難易度に感じました。「新形式はじめての挑戦」がやや難しくて、「標準模試1」が本番と同程度の難易度。「標準模試2」は、本番よりもやや簡単なレベルになると思います。

リーディングだけで言えば、難易度的に初中級者の方にもおススメ出来ます。ただ、リスニングが難しすぎるので、全体で考えるとやはり高地トレーニング向け、という感じがしました。問題の質自体はとても良いので、問題の数をこなしたい上級者の方にはおススメ出来ます。ネイティブ要素のあるリスニングも、やりごたえがあるはずです。

もしこれらのシリーズに挑戦する場合は、「標準模試2」→「標準模試1」→「新形式はじめての挑戦」というように、出版順とは逆の方向で購入するのも良いかもしれません。その方が、徐々に難しくなるのでモチベーションが比較的保ちやすいと思います。