TOEIC模試が、本番よりも難しくなってしまうのは何故なのか

初中級者の方が模試を選ぶときには、難易度に注意が必要

TOEIC模試の問題は、TOEIC本番よりも難しい物が多いです。私はいままで結構な数の模試をやってきていますが、半分以上の模試が本番よりも難しい印象です。さらに、900点以上を目指す「高地トレーニング用」と思われる模試も多かったです。それらの模試は、特に注意書きもなく普通に本屋さんに並んでいます。この事が学習者にとって、かなり危険だと私は思っています。

これは個人的な見解ですが、初中級者の方が本番よりも難しい模試をやるメリットは、あまりありません。なぜならば、まずは簡単な問題を確実に解けるようになったほうが、点数の底上げになるからです。基礎的な問題が出来るようになってから、難しい問題に取り組んだほうが学習の効率が良くなります(当たり前のことですが)。

加えて、初中級者の方が難しい問題に取り組んで、ミスをしたときに正解の根拠が理解しにくい場合があります。解説を読んでも、難しすぎてよく分からないという経験は、私も過去に何度もありました。結果として、学習がうまく進まなくてモチベーションも下がってしまう、という可能性があります。

ですので、初中級者の方がTOEICに臨むにあたって、勉強の為に使う模試の難易度には注意を払う必要があります。

私のおすすめとしては、以下の二つの模試が、特に初中級者の方に適していると思っています。

上記の「究極の模試600問+」は、対話式の解説がとにかく丁寧です。

「世界一わかりやすいTOEIC L&Rテスト総合模試1」は、私がいままでやった中で、初中級者向けの難易度調整が一番うまく行っている模試だと思います。特にリスニングの解説が、初中級者の方にも分かりやすいように、かなり精密に書かれています。

上記の模試のように「600点突破レベル」という表記があったり、「初中級者向け」をアピールしている模試ならば、ある程度安心が出来ます。そのような表記が無ければ、「本番よりも難しい可能性がある」ので、アマゾンのレビューなどをよく読んでから購入したほうが良いと思います。

なぜ、難易度の高い模試が多いのか

難易度の高い模試の表紙等に「上級者向け」と、はっきりと(正直に)記されている事は少ないです。それよりもむしろ「本番をリアルに再現!」とか「本番を徹底的に研究した」のような売り文句が付いている事が多いです。つまり製作者側としては、「TOEIC模試=TOEIC本番」を想定して作成し、それを実現出来ている、と考えているようです。

しかし実際にはそうなっていないわけで、このギャップがなぜ生じているのか、私はずっと不思議に思っていました。まさか、製作者の先生方が嘘をついているとも思えません。ただ、この謎に関して最近私は、少しヒントを見つけた気がしています。

現在私は、リスニング学習の教材として、TOEIC模試と「CNN ENGLISH EXPRESS」を同時にやっているのですが、それぞれ難易度がかなり違います。「CNN ENGLISH EXPRESS」はネイティブ向けのニュース素材を扱っているので、TOEICに比べてかなり難しいです。具体的に言うと、TOEIC満点や、英検1級レベルも超えている難易度です。

この本の中に「CNN ENGLISH EXPRESSの4つのメリット」という記事があり、その4番目に「資格試験も楽勝!」という記述がありました。

確かに、ネイティブ向けのニュースが聞き取れれば、TOEICや英検1級も楽勝になるでしょう。しかし、ネイティブ向けの素材を使って効率よく勉強ができるのは、限られた上級者のみのはずです。英語学習者の中でも、ごく一部の割合になると思います。

英語の学習者のレベル分布を考えてみると、初中級者の割合の方がずっと多いはずです。ですが、教材を作っているプロの方やTOEIC講師の先生方は、日々接している英語のレベルが高く、「CNN ENGLISH EXPRESS」のようなネイティブ向けの素材に親しんでいると思います。

結果として、初中級者向けの教材を作る時にも、難しい要素が紛れ込んでしまうのではないか、と私は思いました。例えばリスニングに関して、初中級者の方がどのように苦労しているのか、超上級者である先生方はなかなか想像する事が出来ないのではないでしょうか。

スポーツで例えると、優れたプレイヤーが、必ずしも良い指導者になれるとは限りません。それと同じように、英語のスペシャリストが、必ずしもよい先生になれるわけではないはずです。また、指導経験が豊富だとしても、教え方がイマイチな先生もいます。つまり、先生としての才能(もしくは良い模試を作る才能)は英語とは別のところにあるはずです。

ということで、「なぜ、難易度の高い模試が多いのか」という疑問に対して、考えられる答えは、

「英語のプロ」は必ずしも「英語指導のプロ」ではない

しかし「英語のプロ」もしくは「TOEICのプロ」が、TOEIC模試を作っているケースが結構ある

よって、初中級者に寄り添っていない、難易度の高い模試が生まれる

という事ではないかと思います。

あくまでも私の想像ですし、模試の著者の先生方に対して、リスペクトが足りないかもしれません。ただ、難易度の高い模試があまりにも多いので、この問題はもう少し語られるべきだと思います。

もっと分かりやすく、難易度の低い模試があると良いと思う

難しい問題に挑戦することは悪い事ではありません。ただ、モチベーションが失われてしまって、学習をやめてしまったら元も子もありません。実際、英語学習を始めた多くの方が、最初の3か月を乗り越えられずにやめてしまうと聞いたことがあります。現状では、初中級の学習者に対する、良い環境づくりができていないと感じます。

本屋さんに行くと、ベストセラーの本が目につきます。また、アマゾンのレビューで高評価の本を買いたくなると思いますが、その書籍の難易度に是非ご注意ください。個人的には、大人の方が再学習される場合でも、英検の4級や5級を目指すのも悪くないと思います。

これを言うと元も子もないですが、TOEICがそもそも、初中級者の学習にあまり向いていない、という感じもしています。TOEICの難易度を考えると、いきなり中級以上のレベルから学習を開始する形になるので、初級者の方は特に挫折しやすいと思います。

ちなみに「TOEIC Bridge」という初中級者向けの試験がありますが、あまり普及はしていません。この試験の存在自体が、つまり「TOEICは初中級者向けではない」事を表しているような気もします(TOEICは中級~上級向けかもしれません)。

ゆるくても、時々サボっても良いので、なんとか継続して続けていれば少しづつ英語力は上がっていきます。ですので、これから英語学習を始めようと思っている方は、本当に小さな一歩から始めることをおススメします。