【詳細レビュー】「TOEIC L&Rテスト990点攻略」は本当に990点を取りたい人のための本

難易度はかなり高いが、コンセプトがはっきりしている

「990点」というワードは、TOEICの書籍のタイトルで結構見かける事があると思います。ただ、多くの場合は「高難易度である」という事を示す意味で「990点」を使っていて、内容はそこまで990点にこだわっていない、という印象を私は持っていました。

ですが、この「TOEIC L&Rテスト990点攻略」は、本気で990点を取りたい人のために作られている、という事がはっきり分かるような内容になっています。ですので、難易度的におススメ出来る人も限られると思います。現在のレベルに対して難しすぎる教材を使うと、勉強の効率が悪いですし、不必要にストレスを感じてしまう可能性があるので、注意が必要です。

個人的な感覚ですが、この本は

「現在700~800点代で、900点を目指す方」には、あまりおススメできません

「現在900点前後で、それ以上を目指す方」には、オススメできます

「最高スコアが900点後半で、なんとか990点に達したい」というかたには、かなりおススメ出来ます

つまりこの本は、990点満点に対して、ラスト10点とか、5点を埋めるために取り組む時に、もっとも効果を発揮するのではないか、と私は思いました。なぜそう感じたかは後述しますが、その前に、この書籍に付属している模試一回分を、私が解いてみた結果をご紹介します。

リスニング 95/100 part3で2ミス part4で2ミス

リーディング 91/100 part5で3ミス part6で2ミス part7で4ミス

という結果になりました。私はいままで、TOEICの模試を結構解いてきましたが、この「TOEIC L&Rテスト990点攻略」は難易度的には過去最高レベルでした。点数的には「精選模試3」の結果に近いのですが、内容的にはこちらの方がだいぶ難しかった印象です。

というよりも、精選模試シリーズとは「難しさの方向が違う」と表現した方が良いかもしれません。誤解を恐れずに言うと「英検1級の問題集を解いている」感覚に近かったです。TOEICの出題範囲を超えた問題が結構出てきました。ですが、そのことによって、理不尽さは感じませんでした

なぜかというと、この本は本当に990点を取るために作られているからです。そのためには、例えば実際には存在しない「1000点ぐらいを取るイメージ」が必要になると思います。ですので、TOEICの出題範囲を超えていることは、むしろ納得感がありました

問題集(解説とテクニック)+模試という内容が効く

前半の問題集は、後半の模試よりもさらに難しい

この書籍は大きく、2つのパートに分かれています。前半は、TOEICのパート別問題集高難易度)と、それの解説及び解き方のテクニック。そして後半が、一回分のTOEIC模試高難易度)になっています。

前半部分の問題集は、後半の模試に出てくる問題よりもさらに難しい印象でした。実際のTOEICには出てこないだろう、という問題が結構含まれています。ですが、先ほども述べましたが、990点を取るためには、TOEICの出題範囲の外側を攻める必要があるのです。

「本番でめったに出てこないが、まれに出るかもしれない難問」を、たくさんこなす必要があります。具体的にどのように難しいのかというと、

リスニング・リーディング共に、

単語のレベルがかなり高い(本番ではまず出ないと思われる物を含む)

慣用表現がたくさん含まれる(しかも難易度が高い物)

選択肢があまり親切ではない(あいまいで迷わせる表現あり)

という印象でした。これが一般的なTOEICの模試として発売されていたら、クレームを受けるかもしれない内容です。アマゾンのレビューで、「本番とあまりにかけ離れている」みたいな、怒りの星一つレビューが並びそうです。ですがこの本は、はっきりと「990点を取る為」と宣言をしています。あえてこの難しさでやっている、という事がよく分かるのです。

解説とテクニックがとにかく腑に落ちる

著者の方が相当TOEICの研究をされているので、問題の解き方に関する説明が非常に精密で、しかも納得感があります。特に印象に残っている解説・テクニックとしては、

リスニング

part1で受け身の進行形に注意を払う(is being 過去分詞みたいなもの)

part2で細部を聞き取るために、ディクテーション(音の書き取り)をする

リーディング

part7は設問ごとに、問題文を段階的に読んで解いていく

という物です。テクニックと言っても小手先の物ではないので、今後、大量の模試を解きながらじっくりと身に着けていく必要があると思います。難易度は高いですが、やり方についての詳しい説明があるので、挑戦する気にさせてくれます。

part2でディクテーションをしたら気付きがたくさんあった

例えばディクテーションは時間がかかるので、私は今までほとんどやったことがありませんでした。ただ、この本に従ってやってみたところ、音の連結や、ナレーションの訛りを推測するのに、非常に効果的であることが分かりました。

リスニングで100%聞き取ることは、かなりの上級者でも、非ネイティブにとっては難しい事だと思います。例えば日本人が日本語を聞く場合でも、お年寄りとか、早口の人の言葉はすべては聞き取れずに、部分的に推測をして聞いているわけです。その推測の練習が、ディクテーションを通して出来るのだと思いました。

効果的ではあるものの、ディクテーションはやはり時間がかかりますし、かなり難しです。ただ、そのような努力が990点を取るためには必要なのだと、身に染みて分かったような気がしました。

達人の方法を知っているだけでもためになる

冒頭から書いておりますが、この書籍はあくまでも990点を目指す人のために作られています。ですので、初中級者の方は無理はせず、基本的にはレベルに合った教材を使うべきだと思います。私がこれまで解いたTOEIC模試を、レベル別に以下にまとめておりますので、よろしければご参照ください。

ただ、中級者以上の方が、一度この「TOEIC L&Rテスト990点攻略」をやってみるメリットはあると思います。その場合、かなり点数が低く出てしまうと思いますが、今はその結果は気にする必要はありません。それよりも「990点を取る」ために、著者の方が取っている戦略や、その視点を知っておくことに意味があります。

恐らく、たくさんの気づきがあるので、部分的に取り入れることは出来るはずです。達人の、すべてをマネをする必要はありません、というか、すべてマネをするのは、だいぶキツイはずです。

例えばこの書籍にあるテクニックの一つに、「part3&4の設問と選択肢をすべて読んで、内容を絞り込んで聞こう」というものがあります。実際私もやってみましたが、頭の容量が足りずに断念しました。学習者がそれぞれ、テクニックを取捨選択する必要もあると思います。

この本に取り組む場合、やはり難易度がかなり高いので、試験前にやってモチベーションを下げないように、気を付けて下さい。試験に対するポジティブな気持ちも、TOEICで点数を取るためには大切だと思います。