リスニングパートのみを扱っている、独特な模試
私はTOEICの試験を定期的に受けておりまして、試験前には必ず実戦形式の模試をやるようにしています。そこで今回は、通称「ウルフ模試」と呼ばれている「TOEIC L&R TEST 990点獲得 Part 1-4 難問模試」をやってみたので、レビューをします。「難問模試」という名前が付いているだけあって、かなり難易度が高かったです。
ちなみに、この模試はTOEICのリスニングパートのみ(part1~4)を扱っています。同じシリーズでpart5と6を扱っている「タイガー模試」とpart7を扱っている「ライオン模試」が存在しています。そちらも私は購入しているので、終わり次第レビューをしたいと思います。
この難問模試(猛獣)シリーズはその名の通り難易度が非常に高いので、初中級者の方が取り組む場合には注意が必要です。TOEICの点数を基準にして、おすすめ出来る学習者のレベルを挙げるとすると、
「現在700~800点代で、900点を目指す方」には、あまりおススメできません。
「現在900点前後で、それ以上を目指す方」には、オススメできます。
「最高スコアが900点後半で、なんとか990点に達したい」というかたには、かなりおススメ出来ます。
というのが私の印象です。以前レビューをした「TOEIC L&Rテスト990点攻略」とターゲット層が、かなり近いと思います。
上記の書籍も非常に難易度が高く、TOEICの満点を目指す方のために、絶妙にレベル調整がされている感じでした。具体的に言うと、TOEIC本番で、ギリギリ出るか出ないかの難しい問題と、部分的には決して出ないであろう難問も含んでいます。
満点を取るために、絶妙なレベル調整がされている
しかし、そのような問題を解くことが、高得点(満点)を取るためには必要なのです。私もまさにこの得点帯でしのぎを削っているので、その必要性がよく分かります。つまりこれらの難問問題集は、ただ単にに難しくしているのではなくて、「あえて」難しくしているわけです。
という感じに、TOEICの後半の点数を取るためには高地トレーニングが必要なのですが、問題の質を維持しつつ、難易度を上げるのは簡単な事ではありません。恐らく、コストをかけずに難しい模試を作ろうとした場合、TOEICとはかけ離れた内容になってしまったり、日本語訳を見ても意味が分からないような、悪問の寄せ集めになってしまう可能性があります(実際にそういう模試がある)。
ですが、この「ウルフ模試」は非常に丁寧に問題が作られている、という印象を受けました。その上でレベル調整にかなり気が配られています。解説はそこまで詳細では無いですが、必要十分と言う感じでバランスが良いです。ですので、高地トレーニングをしたい上級者の方に、かなりおススメ出来る模試だと感じました。
ちなみに、他の模試との比較をご覧になりたい方は、以下のページをご参照ください。
具体的に、どのように難しいのか。私がどこでミスをしたのか。
まずは私の得点をご紹介します。この模試にはTOEICの「リスニングパートの一回分に相当する100問」が、5セット含まれています(part1~4の100問×5セット=500問)。
part1 | part2 | part3 | part4 | ミス合計 | 正答率 | |
TEST1 | 0ミス | 3ミス | 1ミス | 4ミス | 8ミス | 92% |
TEST2 | 0ミス | 2ミス | 3ミス | 2ミス | 7ミス | 93% |
TEST3 | 1ミス | 2ミス | 2ミス | 2ミス | 7ミス | 93% |
TEST4 | 0ミス | 1ミス | 1ミス | 2ミス | 4ミス | 96% |
TEST5 | 0ミス | 2ミス | 7ミス | 4ミス | 13ミス | 87% |
ちなみに、直近の私のTOEICのリスニングスコアは495点で、全体で(恐らく)3ミスでした(5ミスぐらいまでならリスニングは満点が出る)。
と言う感じで、この「ウルフ模試」の難易度の高さが、点数にしっかりと表れています。特にTEST5が酷かったのですが、ここが特別難しかったというよりも、他の回は運よく点数が取れた、という印象の方が強いです。つまり、TEST1~4でも、もっと点数が低くなる可能性がありました。では具体的にどのように難しかったのか、詳細を解説します。
質問と答えの間に距離があるので、行間を埋める必要がある
特にpart2で感じたのですが、質問に対して、答えが単純で無いものが多かったです。part2の問題をご存じの方なら分かると思うのですが、以下のような「応答に距離のある会話」がTOEICには存在します。
質問:昨日、会議で何が決まったのですか?
答え:私は昨日、出張で会社にいませんでした。
上記のような受け答えがpart2に出ます。ずいぶん「ぶっきらぼう」な会話です。もしこれが現実の世界ならば、
質問:昨日、会議で何が決まったのですか?
答え:ごめんなさい、知りません。というのも私は昨日、出張で会社にいなかったので、会議には出られなかったんです。
これぐらいの受け答えをしないと、人間関係が悪化してしまうでしょう。しかしTOEICのpart2で正解を選ぶためには、「ぶっきらぼうな会話」に慣れる必要があります。そして消去法で「会話を成立させるには、この答えしかない」という選択肢を選ぶ必要があります。
質問と答えの間の距離が長くなればなるほど、つまり会話が「ぶっきらぼう」になればなるほど、行間を埋めるために考える必要が生じて、問題は難しくなります。TOEICの本番で、この手の問題は確かに出ます。ただ、めちゃくちゃ「ぶっきらぼうな会話」は、そこまでは出ません。ただ、この「ウルフ模試」では、かなりキツめの「ぶっきらぼう」な会話がどんどん出てくる印象でした。
これがまさに高地トレーニングと言う感じです。「ウルフ模試」でこの手の問題に慣れていると、本番で軽めの「ぶっきらぼう」に当たっても、素早く判断を下すことが出来るはずです。この模試には「ぶっきらぼう」過ぎて、おもわず笑ってしまうような問題も含まれていますが、それが本当に良い訓練になると思います。
全体的にちょっとづつ、絶妙に難易度が上げられている
part3とpart4では、単語のレベルが少しだけ高かったり、人名や会社名が多めに出てきて聞きづらかったりと、難しさが上手く盛られている感じがしました。意味が取れない部分が多くなると、推測で答えが選びにくくなります。個人的に「ウルフ模試」では、TOEIC本番よりも聞き取れない部分が微妙に多くて、そのおかげで誤った推測をしてミスが増えました。
加えて、TOEICでは、なかなか出てこないジャンルの話題も含まれていると感じました。基本的に、予備知識の無い話題は、聞き取りが難しくなります。また、例え聞き取りが上手く出来たとしても、それがなじみの無いジャンルだった場合、話の内容が理解しにくくなります。具体的に言うとネタバレになるので、かなり単純化して書きますが、
最先端の技術
仕事の引継ぎ
役所関係
などは、個人的に慣れていなかったので、「聞こえてはいるが、意味がよく分からない」という感じになってしまいました。推測も働きにくいので、ミスがかなり増えてしまいました。実際の試験でも、私は同様の間違い方をした事が何度もあります。
TOEICでは、リスニングで出てくるジャンルに一定の傾向があります。ただし、高得点を目指す場合は、ジャンルを広げて、リスニングの訓練をする必要があると強く感じました。
質が高い模試は、繰り返し解くと学習効率が高まる
私は英語学習の3年目ぐらいの時に、公式問題集を繰り返しやったのですが、学習の効率がかなり良かった印象があります。つまり、
たくさん間違えて、そのあとしっかりと復習をして、また同じ問題を解く事を繰り返す
というのが、王道の勉強方法で、実際に多くの模試でもそれがオススメされています。そこで重要になるのが、「自分のレベルに合った」教材を選ぶことだと思います。
レベルに対して教材の難易度が高すぎると、解説を読んでも理解が出来ない時があります。また、ミスが多すぎると、学習のモチベーションが低下してしまう事もあります。ですので、適度に点数を取って、達成感を得る事も重要です(出来る問題を解くことは復習にもなる)。
英語学習を始めたばかりの方は、特にモチベーション管理が重要になります。模試をやるとしたら、まずは初心者向けの解説が丁寧な物からやってみて下さい。例えば以下がオススメです。
ウルフ模試は、上級者が解く時にメリットが一番多くなるハズ
ただ、TOEICの900点後半の点数が取れるようになってくると、普通の模試を解いていて、ミスをすることが少なくなってきます。点数が取れるのは良い事ですが、ミスをして初めて、自分の弱点が分かる時もあります。
私も今回「ウルフ模試」をやったことで、新たに気付くことがたくさんありました。このように質が高くて難しい模試は、貴重な存在だと思います。900点後半から、満点を目指している方には、特におすすめ出来ます。