2023年に「TOEICテストBEYOND990超上級リーディング7つのコアスキル」をやったレビュー

複雑なタイトルにふさわしい超難易度だった

最初にこの本の内容を短くまとめてみます。

満点を目指すというコンセプトのもと、工夫を凝らしたトレーニングが用意されて、通常の問題も非常に難易度の高い物が収録されている。問題の質は非常に高いが、英検1級の参考書を思わせるような内容と難しさなので、TOEIC目的で使う場合、有効活用できる学習者はかなり限られるはず。

個人的に素晴らしい本だとは思うが、満点を目指している人以外には全くおススメ出来ない。

と言う感じです。TOEICマニアのために、TOEICマスターの先生が作ってくれた本です。この本に出合えて私は嬉しかったですが、人を選ぶ本なので、あまり売れなかったんじゃないかな……と勝手な心配をしてしまいました。

以前、「TOEICテストBEYOND 990 超上級問題+プロの極意」をやってレビューをしました。

上記の本も難易度がかなり高いのですが、上級者の方が900点後半~満点を目指すうえで、かなり役立つ内容になっていました。

今回の本はその続編というよりは、姉妹本と言った方が良いかもしれません。その違いがちょっと分かりにくいので、表にしてみます。

(前回)超上級プロの極意(今回)7つのコアスキル
著者ロス・タロック
TEX加藤
ヒロ前田
ロス・タロック
テッド寺倉
内容リスニング&リーディングリーディングのみ
対象レベル800点860点
目標レベル990点990点

ロス・タロック先生はどちらの本にも関わっているのですが、英文作成を担当されていて、表には出てこない印象です。中身の文章を読んだ感じでは、本の方向性を決めているのは、日本人の著者の方だと思いました。

つまり、前回の本はTEX加藤先生とヒロ前田先生が指揮を執り、今回の本は、テッド寺倉先生が指揮を執って作った本、という形のようです。リスニングパートは無くて、リーディングの難問に特化した内容になっています。

TOEICでは、リスニングに比べてリーディングで満点を取る方がかなり難しいです。このことからも、今回の本は満点を目指すことによりフォーカスしている、という事が分かります。

取り組む際には、難易度に注意が必要

前回の本もそうでしたが、満点を目指すコンセプトで作られているのに、対象レベルが860点と表記されているのには違和感があります。私の個人的な印象ですが、この本は950点以上を現在安定的に取っている方が、満点を目指す時に一番効果を発揮するはずです。

例えば900点→950点に点数を上げるならば、ここまで難しい本をやる必要はありませんし、基礎的な問題でミスを無くす訓練をした方が、学習の効率が良いはずです。もっと言えば、950点→980点を目指す場合でも、この本は必要ないかもしれません。あくまでも990点に近づくための、最後の一歩を埋めるための本、という印象を私は持ちました。

こう言ってはなんですが、「対象レベル860点」という表記は、本を売るために無理やりに間口を広げた結果だと思います。ですので、取り組む際には難易度に注意が必要です。

では、この本がどのように難しいのか、もう少し掘り下げて説明したいと思います。

TOEICの出題範囲を大きく超えた内容・難易度だが、説得力はある

前回の本「超上級プロの極意」と似ている点として、通常形式の問題を解くだけでは無く、工夫を凝らした変化球のような問題が多数収録されています。

例えば、長文問題の答えを、選択肢では無く英単語で答える問題があったり、20個の語句の言い換えを、併記された20個の候補と結びつける問題があります。長文問題はあえて読みづらい込み入った文章が収録され、語彙・語法の問題は英検1級レベルに近い物も含む内容です。

もう、めちゃくちゃに難易度が高いわけですが、満点を目指すというコンセプトの本なので納得が行きます。前回の「超上級プロの極意」でヒロ前田先生が言っていた「満点をコンスタントに取るには、TOEICで1200点を取る実力が必要」という言葉にも通じていると感じました。

この本の雰囲気を別の形で例えるとしたら、

かなり難しいけれど、充実した内容の大学の講義。一部の生徒には人気だが、単位が欲しいだけの生徒は決して選ばない。先生は厳しい。熱心でやる気のある生徒だけ来てくれれば良い、という事がはっきりしている。

と言った感じでしょうか。ちょっと古いスタイルの真面目な本です。

ところで、ここで一冊の本をご紹介します。

同様にTOEIC満点を目指すコンセプトのもとに作られた、濱崎潤之輔先生の「TOEIC L&Rテスト990点攻略」です。以前にレビューもしました。

この本も難易度がかなり高いのですが、それでも学習者が出来るだけ取り組みやすいように、キャッチーな内容・印象になっています。例えば、イラストが多めに使われていたり、コラムで学習者を励ます内容があったりと、様々な配慮を感じます。

こちらの本も先ほどと似たような形で例えるならば

かなり難しいけれど、充実した内容の予備校の講義。先生の話が面白いので、理解があまり出来なくても受講する生徒が大勢いる。難解な内容を、なんとかキャッチーにしようとする先生の努力が感じられる。

という感じです。ちょっと言い方がアレですが、商売上手な印象もあります。

満点を目指す学習者は是非やってみて欲しい

発行年的に見て「超上級プロの極意(改訂前2010年発行)」があり、それらの難易度・クオリティを参考にしつつ、より学習者に寄り添った形にしたのが「TOEIC L&Rテスト990点攻略(改訂前2013年発行)」と言えるかもしれません。一方で、満点への最後の一歩のために、より実用的に作られた一冊が、今回の「7つのコアスキル(2015年発行)」だと思います。

というわけで、TOEIC満点を目指している学習者の方におすすめする場合、まずは「TOEIC L&Rテスト990点攻略」が一番とっつきやすくて良いと思います。難易度はかなり高いですが、ストレスは感じにくいはずです。また、TOEICで使える実践的なテクニックについても解説があり、非常に有益に感じました。

そして、さらに似たような内容で教材のおかわりが欲しい場合に、「超上級プロの極意(2010年発行)」と「7つのコアスキル(2015年発行)」をやってみるのが良いと思います。先ほども述べましたが、今回の「7つのコアスキル」は、学習者に対してやや厳しい雰囲気の本です。ですが、真剣に取り組めばかなり学習効果は得られるはずです。

ちなみに、この本の語彙・語法パートで「数回受験して、1回出くわすかどうかの難問」に対応する必要性が述べられていました。満点を連続で取るためには、やはりそれぐらいやらないとダメなんだろうな、と感じた部分でした。