
シリーズに共通する、難易度の高さと問題の質の良さ
最近、メディアビーコンから出版されている、難問模試のシリーズを続けざまにやっております。PART1~4のリスニング問題を扱っている通称「ウルフ模試」と、PART5・6を扱う通称「タイガー模試」は既にレビューをしました。
そして今回、PART7を扱っている「TOEIC L&R TEST 990点獲得 最強Part7模試」、通称「ライオン模試」をやったので、レビューをします。
高い難易度と質の良さを絶妙に両立している
この「ライオン模試」は、前述の「ウルフ模試」と「タイガー模試」と同様に、難易度は高めに設定されています。同時に、シリーズに共通する要素として、問題の質の良さを確かに感じました。私は今まで結構な数のTOEIC模試を解いてきたので、その模試が丁寧に作られているかどうかというのは、解いてみると感覚的に分かる事が多いです。
(恐らく)コストや時間が足りなくて、作りが雑になってしまっている模試も、存在しています。それらを解いていると、粗が目立つのですぐに分かります。例えばPART7の長文問題に関して言えば、TOEICで出てこないような単語を使っていたり、文章があまり論理的では無くて、日本語訳を読んでも意味が取り辛い事があります(推敲が足りていない)。
一方でこの「ライオン模試」は、問題を解いていると「かなり丁寧に作っている」という事が伝わってきます。「ウルフ&タイガー模試」のレビューでも述べましたが、難易度を上げた状態で、質の高い問題を作るのはかなり大変なハズです。コストや時間が、かなり費やされていると思います。ですので、この模試は特にTOEICの上級者にとって、貴重な存在だと言えると思います。
具体的にどのように難しいのか、おススメ出来る学習者のレベルとは
最近のTOEICの傾向として、PART7の本文が長くなっている、という事が挙げられると思います。それをしっかりと反映して「ライオン模試」の本文もかなり長めになっています。個人的に、TOEIC本番よりも1.2~1.5倍ぐらいの長さのある問題が多く含まれている印象でした。
本文が長くなれば当然、それを読み解くための時間も増加します。試験の制限時間内にすべてを読むためには、しっかりと訓練をする必要があります。ちなみに、TOEICのリーディングパートを時間内に解く場合、目安になる目標タイムがあります。
TOEICリーディング(75分)
目標タイムの目安
part5 10分
part6 10分
part7 55分
合計 75分
上記のタイムをある程度感覚として掴んで置くと、試験本番で時間配分がしやすくなります。そのためには、時間を計って模試を解く練習が必要です。さらにpart7は、目標タイムの55分よりも早く解き終わって、残りの時間を解答の見直しに充てられると理想的です。恐らくですが、900点後半のスコアを取っている方ならば、TOEICの本番で5分以上は時間が余るのではないでしょうか。
ただ、この「ライオン模試」は先ほど述べたように、本文が長くなっています。加えて、使われている単語や文法も難易度が高めです。ですので、上級者の方でも恐らく、55分をフルで使って問題を解くことになり、時間はほとんど残らないと思います。ですので、時間的な意味でも、高地トレーニングが出来ます。
TOEICの出題範囲に収まっているので、幅広い学習者におススメ出来る
以上の事を踏まえて、この「ライオン模試」をおススメ出来る、学習者のレベルを個人的に考えてみました。TOEICの点数換算で、
「現在700点以下の方」には、あまりおススメできません。
「現在700~800点代で、900点を目指す方」には、おススメできます。
「現在900点前後で、それ以上を目指す方」には、かなりオススメできます。
「最高スコアが900点後半で、なんとか990点に達したい」というかたにも、かなりおススメ出来ます。
という印象です。「ライオン模試」は難問が多いですが、part5・6を扱っているタイガー模試と同様に、対象者は結構広めになると思います。その理由は、part7は時間の要素を取り除けば、そこまで難しくない、という見方も出来るからです。
つまり、現在900点に達していない方でも、時間を気にせずに解くならば、この模試を良い教材に出来ると思います。単語のレベルは高めですが、あくまでもTOEICの範囲内に収まっています。ただし逆に言うと、TOEICの出題範囲内で、難単語が大量に出てきます。最初は読み解くのが大変だと思いますが、繰り返し模試を解くことによって、それらの単語は覚える事が出来るはずです。
難しすぎると感じたら無理はせずに、レベルに合ったものを先にやるべき
ただ、この「ライオン模試」は解説が手取り足取りというという感じではありません。ピンポイントでバランスよく解説がされているとは思いますが、繰り返し解いて勉強するときに、もっと説明が欲しいと感じる学習者の方もいるはずです。その場合は難易度を下げて、解説の丁寧な初中級者向けの模試にまずは取り組んだ方が、学習の効率が高まるはずです。
あまりにレベルが合っていない模試をやると、モチベーションにマイナスに働くこともあるので、注意が必要です。モチベーション管理は、学習を継続するための大切な要素です。無理はしないようにして下さい。
初中級者の方には以下の模試がオススメ(解説がとても丁寧です)
私の得点状況と、難しく感じた具体的なポイント
ここで私の「ライオン模試」の得点状況をご紹介します。この模試にはpart7の問題が合計4回分含まれています。TOEIC本番と同様に、問題番号147~200までの54問が4回分です。
ミス数 | 得点率 | |
TEST1 | 2ミス | 96% |
TEST2 | 3ミス | 94% |
TEST3 | 2ミス | 96% |
TEST4 | 1ミス | 98% |
点数だけ見ると、そこまで難易度が高くない、という印象になるかもしれません。確かに、難易度が高いと言われている精選模試シリーズの私の得点率と比べると、この「ライオン模試」の得点率はやや高めになりました。(以下に、過去にやった模試のレビューがありますので、よろしければご参照ください)
読み解く難易度以上に、時間的な制約が厳しい
ただ、精選模試シリーズも含めて、難問模試と言われている物はすべて、本文が長くて複雑です。そして、単語や文法のレベルも高めに調整されています。ですので、TOEICの上級者の方でも、時間配分をちょっとミスると、最後まで解き終わらない、というリスクがあります。ですので、点数には現れない難しさがあります。
実際、私はこの「ライオン模試」のTEST1~TEST4すべてを、時間ギリギリで解きました。問題176番以降は通常、ダブル・トリプルパッセージの問題(複数の文章を見比べる問題)になっていて、私はその手前で時間を確認することにしています。その段階で、TOEIC本番では30分以上は時間が残っているのですが、「ライオン模試」ではすべて30分を切っていて、かなり焦りました。
ですので、TOEIC900点代の方でも、時間が足りなくなってしまうケースがあると思います。
順番に問題を解いていくテクニックが、通用しないものがある
それ以外に、TOEIC本番より難しいと感じた要素がもう一つあります。通常、問題の順番に解いていけば、TOEIC本番のリーディングで、返り読みをする必要はほとんどありません(返り読みは、時間のロスになるので避けたい)。
しかしこの「ライオン模試」では、文章の構造がやや複雑になっているので、何度か返り読みをする必要がありました。個人的に、より読解力を高める必要を感じました。
これ以上難しくしようとすると、TOEICの出題範囲から離れて行くはず
高地トレーニング用に難問模試を作る場合、上級者がもっとミスをするような問題を入れた方が、やりがいがあって良いと考える方もいるかもしれません。ただ、TOEICの出題範囲を守った上で難易度を上げるには、限度があると思います。無理にそのような問題を作るならば、恐らく、意地悪なひっかけ問題や、あいまいな選択肢を増やすことになるはずです。
実際のTOEICでは、ひっかけ問題はほとんど出ない印象ですし、選択肢も分かりやすい物が多いです。ですので、過剰にハードな問題を解いても、点数を上げる目的では、あまり効果は無いと私は思います。また、その手の問題は悪問に感じられる物も多いので、学習者の精神衛生上、あまりおすすめ出来ません。
ということで、まとめるとこの「ライオン模試」は、
あくまでもTOEICの出題傾向に沿っている
その上で本文が長くやや複雑で、単語や文法の難易度も高い
結果的に、上級者向けにギリギリの難易度調整がされている(変な難問が無い)
という、かなり完成度の高い難問模試になっています。
上級者の方にはもちろん、繰り返し解くならば、中級者以上の方にもおススメ出来ます。