実践ビジネス英語の最新版は、電子書籍バージョンが存在する
私は最近、リスニングの細部を聞きこむ訓練をするために、実践ビジネス英語の書籍版(ラジオから抜粋したシリーズ)を使っています。
上記の書籍を、私は以前英検1級のリスニング対策で使ったのですが、学習効果をかなり感じました。TOEICの900点後半を目指している方にも、レベルがマッチしているのでおススメ出来ます。
実践ビジネス英語の書籍版は過去に、結構たくさん出ています。
2005年に発売されたものが、恐らく手に入る一番古い書籍だと思います。さすがに話の内容が古めかしいのですが、内容自体はクオリティが非常に高いです。ものによっては中古でかなり安く手に入りますので、このレベルのリスニング教材を大量に欲しい方は、これらで勉強をするのもアリだと思います(一部、値段が高騰している本もありますが)。
クオリティの高さは間違いないので、今回私は「実践ビジネス英語」の最新版を購入してみました。しかも「電子書籍版」を試してみる事にしました。というのも、アマゾンのkindleショップで、対象の本が半額セールになっていたからです。
発売当初からこの本をチェックしているのですが、定期的に半額セールをやっているようです。ですので、購入を検討されている方は、そのタイミングを狙ってみてもいいと思います。ちなみに、kindle(アマゾン専用の電子書籍端末)が無くても、スマホにキンドル用のアプリを入れれば読むことができます。
電子書籍には「パラパラとページをめくれない」問題がある
英語の参考書や模試を買う場合、基本的に私は紙の本を選んできました。というのも、学習用の本は「ページをパラパラとめくる」ような使い方を必要とするからです。
具体的に言うと、特定のページを素早く行ったり来たりする使い方をする事があります。また、教材を使い込んで行くと、ある程度情報の位置を記憶する事ができます。すると、直感的にページをめくって、情報を探し当てる事が出来るようになります。
一方で電子書籍では、この「ページをパラパラめくる」ということが出来ません。というわけで、この手の本は、電子書籍と相性が悪いと思っていました。ですが今回、最新版の「実践ビジネス英語」のkindle版を買ってみたところ、電子書籍の不便さを補うべく、かなり工夫がされていました。今回はその詳細をご紹介したいと思います。
電子書籍の機能を活用した作りになっている
電子書籍端末(kindle)は結構歴史があります。私は2011年に、アメリカのアマゾンから輸入をして使い始めました(キーボード付きのkindle3)。当時の物はバックライトが無かったり、辞書機能も乏しかったりと、不便な事も多かったです。
ただ、それから10年以上経つ間に、様々な機能が取捨選択され、本体の性能も上がって、かなり洗練された読書用端末になりました。それと同時に、出版社側も電子書籍の作り方に習熟してきたと思います。
電子書籍は、本文の中にリンクボタンを付ける事ができます。つまり、スマホでネットを見ているときのように、リンクを踏むことによって、特定の場所に瞬時に移動することが出来ます。書籍のように「パラパラめくる」ことは出来ないのですが、それを、このリンクボタンである意味、代用することが出来るわけです。
ただし、この書籍内のリンクボタンは本の作成者が付けるもので、読者が勝手に編集できるものではありません。ですので、使いやすい電子書籍を作るためには、紙媒体とはまた違った工夫をする必要があります。出版社がここにコストをかけない場合、紙の書籍をただPDFにしただけのような、非常に使いにくい電子書籍が出来てしまう事も多いです。
一方で、今回の「実践ビジネス英会話」の電子書籍版は、非常に洗練された作りになっていました。「パラパラめくる」ことが出来ないデメリットを、「リンクが使える」メリットで上手に埋め合わせています。
紙の書籍と電子書籍版は、本の構成がかなり違う
紙の書籍版の作りは、よくある一般的なリスニング教材の構成です。テキスト本文と、その英語音声で構成されています。紙の書籍版にはCDが付属していますが、電子書籍版はネットからダウンロードする形になっています。恐らく、電子書籍版を半額セールで出せるのは、CDが無いおかげだと思います。ちなみに、紙の書籍を買った場合も、音源のダウンロードは出来ます。
紙の書籍の見開き1ページ分
紙の書籍では、本の見開きで左のページに英文、右のページに日本語訳が配置されています。加えて、ページの下部に、そのページ内の重要単語や慣用表現の解説が記載されています。これはよく見るページ構成だと思いますが、勉強するには必要十分です。音源を聞きながら英文を見たり、和訳をチェックしやすいです。
この実践ビジネス英語には、全部で20個のレッスン(話題)が含まれており、その一つのレッスンが見開き5ページ分で構成されています。つまり、「見開き5ページ」×20レッスンということです。
リスニングの勉強をしているときは、「テキストを見ないで(本を閉じて)音源を聞くこと」もよくあります。その最中に、聞き取れなかったり、単語の意味を調べるために、とっさに特定のページを開く必要が出てきます。これを紙書籍の場合は直感的に出来るわけです。「ページをパラパラめくる」メリットがここにあります。
一方で、電子書籍のページ構成
電子書籍の場合は、見開きページという考え方がありません(恐らく画面サイズが小さいため)。よって、紙の書籍とはだいぶ違う構成になっています。ページ順に、「英文」→「和訳」→「英日」→「単語・慣用表現の解説」という構成になっています。ここで言う「英日」とは、会話の発言ごとに英文+和訳を表示していく、少し特殊な形です。
分かりにくいとは思いますが、無理やり図にしてみました。
まず最初に「英文」が来るわけですが、「英日」をすぐに見たい人のためにリンクも表示されています。これは恐らく、「英日」が「紙書籍の見開き表記」に一番近いので、そこに配慮しているのだと思います。
そして、英文の末尾には「単語ページへのリンク」が表示されていて、そこを押せばすぐに解説を参照することができます。加えて、リンクで他の場所へ飛んだ場合、元の場所に戻るボタンも表示されます。これで「ページを行ったり来たり」ということが疑似的に可能になっています。
英文の後には和訳のページが続きます。ここには特にリンクはありません。
次に、「英日」のページが続きます。ここでは英文と和訳を同時に見れるので、英日表示をメインに使う人も多いと思います。私も、基本的にはここを見る事が多いです。そのためか、ここを出発点にして、英文と単語に飛ぶためのリンクが設定されています。
最後に、本文で使われている単語や熟語のページが来ます。それぞれの単語にリンクが付いており、ここから逆に、その単語が使われている本文(英文ページ)の該当箇所へ飛ぶことが出来ます。また、英日表現へ戻るリンクもあります。
以上が、紙の書籍で言う所の、見開き一ページ分に相当します。つまり、上記の流れ×5回で1レッスンになるわけです。紙の書籍に比べると、英日表示が追加されているので、分量がほぼ2倍になっています。さらに、各所にリンクがちりばめられています。
電子書籍版では、見開き表記がありませんし、パラパラめくれないデメリットがあります。それをリンクを使って、なんとか上手く補っている印象でした。
実際に使ってみて、紙書籍との違いをどう感じたのか
まず前提として、私は紙の書籍に慣れているので、基本的に紙の書籍の方が便利だと感じています。ですが、この電子書籍版はリンクを使うことによって、かなり紙の書籍に近い使い方が出来ると感じました。慣れてしまえば、情報の参照スピードも、そんなに差が出ないと思います。
参考書の使い方は、学習者によってそれぞれ変わるはずです。実践ビジネス英語は、レベルで言うとC1(英検1級やTOEIC945以上)に属しています。まだそのレベルに達していない学習者がこの本を使う場合、頻繁に本文を見たり、単語を参照する必要があるでしょう。その場合、紙書籍の方が多少は良いかもしれません。
一方で、C1レベル以上の学習者がこの本を使う場合、紙書籍か電子書籍かの違いは、さほど問題にならないと思います。むしろ、電子書籍の機能性が、紙書籍のメリットを上回ることになりそうです。
アマゾンで、電子書籍版のサンプルページを見る事が出来ます。
購入を検討されている方は、一度そちらを見て、ご自分の学習スタイルに合わせて選ぶのが一番だと思います。
紙の書籍と電子書籍の特徴を知って、うまく使い分けるのがベスト
最後に、紙の書籍と電子書籍の、それぞれのメリットとデメリットを一覧表にしてみました。
紙の書籍 | 電子書籍 | |
メリット | パラパラとめくりやすい(直感的に使える) 存在感がある(モチベーションに影響する) 他の書籍と見比べるような使い方がしやすい | 持ち運びが楽(どこでも勉強ができる) 価格が安い傾向がある(紙やCDを必要としない) 様々な機能が使える(リンク機能・フォントサイズ変更・辞書機能・検索機能等) いつでもどこでも手に入る(売り切れが無い) 購入後でも改訂が可能(出版社によるが) |
デメリット | 持ち運びにくい(重い本は特に) 価格がやや高い傾向がある 絶版になることがある(値段が高騰することも) | パラパラとめくれない(操作に慣れが必要) 出版社によって、電子化のクオリティが異なる 電子書籍を見るデバイスが必要(kindleやスマホなど) バッテリーが切れると全く見れなくなる |
こう見ると、電子書籍の方にメリットが多いと思います。紙の書籍の一番の強みと思われる「パラパラめくれる」メリットも、人々が電子書籍により慣れてしまえば、その強みを失っていくのかもしれません。
恐らくですが、今後、紙の書籍は電子書籍に移行していくのだと思います。ただどちらにせよ、学習者の選択肢が増えることは有難いことです。用途に合わせて、使いこなして行きたいと思います。