ネイティブ向けの音源をリスニング教材として使うには、注意が必要だと思う理由

学習向けのリスニングの音源は、ネイティブ向けの物とかなり違いがある

最初に要約を書きます

ネイティブ向けのリスニング音源は、当たり前だがかなり難易度が高い

この難易度がどのように高いのか、という事に学習者は注意を払う必要がある

TOEIC・英検1級のリスニング素材は学習向けなので、音の短縮・省略・訛り極力抑えられている

一方で、例えばネイティブ向けのニュース音源には、音の短縮・省略・訛りがてんこ盛りになっている

よって、ネイティブ向けのリスニング素材を学習素材に使うのは、TOEICや英検1級で満点近く取れるようになってからでも遅くは無い

ドラマの視聴を勧める勉強法もよく聞くけれど、初中級者にとっては遠回りになってしまうのではないか(日常会話はある意味一番難しいはず)

という感じです。

学習向けの音源では、「音」と「文字」がほぼ100%一致している

私はここ2年ほど、TOEIC対策を中心に勉強をしてきました。そして最近、英検1級の一次試験を受けたのですが、リスニングの内容が非常に面白かったです。TOEICはビジネス向けで、実務的な内容の物が多い一方で、英検1級では歴史や自然科学などを扱った物が出てきます(リーディングも同じ傾向がある)。

ですので、音源を聞くのと同時に、話の内容についても興味が沸きました。勉強中に関連情報がどうしても気になって、ニューヨークの下水調査とか、生物の不老不死の可能性についてwikiなどで延々と調べてしまいました。

と言う感じで楽しかったので、リスニングで扱う素材の範囲を広げたいと思うようになりました。そこで、かなり昔に挑戦して、一度断念していた「CNN ENGLISH EXPRESS」を再び手に取ることにしました。

5年ほど前にTOEICで900点以上を取って、英検1級を目指す段階で、ネイティブ向けの素材に一度挑戦した記憶があります。スピードは速いし、音の短縮・省略が凄いし、これを使って学習するのは厳しいな、と当時感じました。ということで一旦保留にしたのですが、割と正しい判断だったと思います

というのも、TOEICや英検1級のリスニング素材は、学習向けなので非常にクリアなリスニング音源を扱っています。ここでは、音の短縮・圧縮・訛りが極力抑えられています。音源に対して、参考書のスクリプト(音を文字に書き起こしたもの)がしっかり対応しています。音100%に対して文字が100%、はっきりと記されているわけです。という事で、学習者はその100%に集中する事ができます。

ちなみに私は現在学習9年目で、ようやくTOEICの音源が100%近く聞き取れるようになったと感じています。正確に言うと95%ぐらい聞き取れて、残りの5%は音の省略や訛りではっきりとは聞き取れない、みたいな印象です。残りの5%は推測で対応しているのですが、たいてい「I’ve」や「I’d」のような省略や、前置詞の「at」が消えている物を推測すればよいので、難易度はそれほど高くありません。

ネイティブ向けの音源には、大量の変化球(音の短縮等)が含まれている

一方で、現在の私がネイティブ向けのニュース音源を聞いた場合、70%ぐらい聞き取れて30%は推測で対応しなければならない、ぐらいの物が多いです(素材によって数字はかなり変動します)。既に知っている簡単な単語でも、ニュース音源だと全く聞き取れない時がかなりあります。

たとえば「astronomer(天文学者)」という単語がTOEICで出てきた場合、「アスタラナマー」ぐらいで聞こえるはずです(模範的な発音)。それが、上記の「CNN ENGLISH EXPRESS」のニュース音源だと「ウストルゥンバ」と聞こえる物が出てきました(本当にそう聞こえる)。これを初回で聞き取るのは、今の私には無理です(天文学の話題という事は分かっていても推測不可能)。

ネイティブ向け音源を聞いていると、このような例がかなり出てきます。ネット上の辞書で聞ける単語の発音と、ニュースの発音はかなり違います。スピードもメチャクチャ速いですし、音が消えてしまっている部分も多いです。

そう考えると、初中級者の方がネイティブ向けの音源に触れるのは、負荷が大きすぎると私は思います。短い文章でも、聞き取りが難しい部分が多すぎて、学習の効率がかなり悪くなるはずです。それよりは、まずは基本的な学習向けの素材を、100%聞けるようにした方が近道になると思います。

学習9年目で、ようやくネイティブ向けの素材が扱えると感じた

最近私は、TOEICのリスニングで細部を聞き取る訓練をずっとやっていました。先ほども述べましたが、95%は聞き取れて残りの5%は推測をするぐらいの聞き方になっています。結果として、推測をしなければならない5%の部分の精度を上げたい、という気持ちがありました。

TOEICや英検のリスニング素材だと、推測は5%で良いのですが、ネイティブ向けのニュース素材だと、この部分が例えば30%になるわけです。ですので、今の私にとっては非常にやりがいのある素材だと感じています。

上でも触れた「ウストルゥンバ」を何度もリピートして、それが「astronomer(天文学者)」だと脳が理解するように訓練をしています。綺麗な発音「アスタラナマー」と、ニュースの発音「ウストルゥンバ」を、脳内で一致させる作業という感じです。少し奇妙ですがやりがいがあります

この作業は、綺麗な発音「アスタラナマー」を聞いたときに「astronomer(天文学者)」が同時に意味として出てくる状態だからこそ、出来る事だと感じています。例えば初級者の方が、「アスタラナマー」と「ウストルゥンバ」を同時に脳に入れ込むのはどう考えてもキツイです。

ニュース素材では、音の消失もかなりあります。「CNN ENGLISH EXPRESS」には音源に対するスクリプトがすべて記されていますが、「実際には全然言ってないじゃん」と感じる部分が結構あります。例えば冒頭に「well」とあっても、実際に聞こえるのは「ォ」だけだったりします。そういうパターンを繰り返し勉強していけば、いつかはこの「ォ」が「well」として捉えられるようになるはず、と今は信じて勉強しています

ちなみに、これら作業は難易度が高過ぎると感じていますが、マニアック過ぎてむしろ面白いです。割とモチベーション高くやれています。44歳の非ネイティブが、いったいどこまで聞こえるようになるんだろう、という実験体のような気持ちです。

初中級者がネイティブ向け音源に触れるのは、おすすめなのか?

好きな海外ドラマを見ていたら、英語のリスニングが出来るようになった、というのは割とよく聞く話です。ただこれは、「めちゃくちゃ」繰り返し同じドラマを見ていて、それこそ「マニア」になっている人の副次的な成果なのではないか、と私は疑っています。

同様のケースで、日本語ペラペラの外国人の方が「アニメを暗記するほど見た」と言っていました。その方は、アニメのセリフを会話で使ってしまって、恥ずかしい思いをしたというエピソードを語っていました(「そなた」とか「ありがとよ」とか)。

確かにそれぐらい繰り返して見て、脳に定着させることが出来れば、大きな成果が得られるはずです。ただ、多くの人はそんなに繰り返して、同じものを見続けられないはずです。人はすぐに勉強に飽きます。私のこのブログでも強調していますが、モチベーションの維持が学習においては一番大切で、そして一番難しい部分です。

「大・大・大好きで、暗記するほど好きな作品」があるなら、良いかもしれません。ただ、それ以外の方は、学習向けの素材から始めるのが一番効率が良いですし、いろんな素材に触れられるので飽きにくくなるでしょう。もちろん、好きなネイティブ向け音源を気晴らしで教材に使うとかは、良い事だと思います。

そしてほぼ100%基礎的な文章が聞けるようになったら、本格的に音の短縮・省略・訛りに挑戦するとちょうど良いのではないでしょうか。挑戦して、どれだけ聞けるようになるのか個人的には不安ではありますが(めちゃくちゃムズイ)。