英語力ゼロからTOEIC600点を目指す為のロードマップ(その2:最初の3か月編)

専門家や先生方は、生徒の挫折可能性をあまり考慮してくれない

私は英語学習を8年以上続けているのですが、英語を教える立場として考えた場合、ほとんど素人です。一方で、多くの英語の専門家や先生方が、初心者に対して勉強方法を提案してくれています。もちろんそれは、多くの人にとって効果的な方法だと思います。

ただ、上級者の方々が初心者のために勉強法を考える場合、生徒の「挫折しやすさ」が考慮されていないことが非常に多いです。恐らく、ご自分は初心者の時にあまり苦労をしなかったか、その時のことを忘れてしまっているのかもしれません。

私も学生時代に運動部(剣道)に長いこと所属していましたので、指導者の方の容赦の無さをたくさん見てきました。そして、運動部だと良くある話ですが、夏休み前に新入部員の多くが退部してしまいます(スポ魂マンガでも良くみるシーン)。

特に私は趣味として英語をやっているので、学習初期に挫折してしまう人をみると、本当にもったいないと感じます。みんながプロフェッショナルを目指しているわけではありません。やりがいのある趣味として、英語学習を続けることが出来たら、それは確かな人生の楽しみになります。

前置きが長くなりましたが、そういうわけで、独学9年目の私でも、初心者の学習プランを考える意味があると考えています。とにかく、初心者の方が継続できることにフォーカスをして、今回のプランも考えておりますので、ご参考になりましたら幸いです(やたらと文章が固い)。

学習をルーティン化することを一番の目標とする

前回のその1では、友人の奥様から英語学習について相談を受けた過程と、学習を開始して、それを継続するための心構えについて書きました。

毎日1時間以上の英語学習を続けていくためには、学習を習慣化する必要があります。そのためのモチベーションの維持の方法は、個人によって違いがあるでしょう。

ですが、ほとんどの人が「絶対に勉強をしたくない」という気持ちに何度も襲われるはずです。そこを乗り越えられるかどうかが、目標達成のための一番の鍵になります。学習を開始して最初の3か月は、脳や体が激しい拒否反応を示すので、特にストレスが溜まりやすいです。無理をせず、小さな達成感を感じつつ、じわじわと前に進むことが大切です。

シンプルな学習スタイルでとにかく継続を目指す

まずは学習の種類と時間配分をご紹介します。友人の奥様は毎日1時間以上の学習をすることになっています。その内訳です。

瞬間英作文:30分~

発音学習(アプリのelsa speak):15分~

単語学習:15分~

リスニングの聞き流し:スキマ時間で出来るだけ

合計 1時間以上

上記の時間はあくまでも目安で、その日の気分によって自由に変えてOKです。ただし合計1時間以上の学習時間は、必ず確保してください。なお、隙間時間でのリスニングは毎日の学習時間(1時間)に含めない事とします。

次に、それぞれの学習についての詳細をご説明します。

瞬間英作文を繰り返すと、英文の構造(英文法)に脳が慣れていく

私の場合は、英語上達完全マップを参考にして、学習を開始しました。私の一年目の学習記録を見て頂くと分かるのですが、初心者にとって、「瞬間英作文」は学習のペースを作るのに非常に適しています。また、英文法は難易度が高いので挫折の原因になりがちですが、簡単な「瞬間英作文」を繰り返すことによって、英文法の基礎が身に付きます。よって、文法学習のストレスも比較的少なくすることが出来ます。

一方で、音読とリピーティングは完全マップでも推奨されている学習方法ですが、初心者にとって難易度が高く、ストレスが非常に溜まりやすいです。ということで、まずは瞬間英作文だけを集中してやることをおススメします。

音読やリピーティングに挑戦したい方は、少しやってみて、自分のストレス状態を確かめてみてください。キツそうだったら、初めのうちは保留にしておくことをおススメします(恐らく相当キツイはず)。

瞬間英作文のための書籍は下記の物が有名です。やや古い本ですが、大抵の本屋に置いてありますし、おススメです。ちなみにこの本以外でも、初心者向けの本を選べば、内容や成果に大差は無いと思います。お好みでお選びください。

この本を使ってやることは非常にシンプルです。日本語を見て、それに対応する英文を「何も見ずに瞬間で言えるようにする」事が目標です。スラスラと言えるようになるまで、地道に繰り返しやりましょう。個人差はあると思いますが、スラスラと言えるようになるためには、この本を20周以上はやる必要があると思います。

最初のうちは全くうまく言えなくて、ストレスが溜まると思います。ただ、慣れてくると、本を一周するための時間が徐々に短くなっていきます。それと同時に、感じるストレスも少なくなっていくはずです。最初の3か月はこの本だけをやる、ぐらいの感覚で良いと思います。瞬間英作文を通して、まずは英語の基本形を脳に刻み込みましょう。

瞬間英作文の正しいやり方に関して、迷う方も多いと思います。暗記してしまっても良いのか? とか、何度繰り返すのが適正か? のような疑問が沸くはずです。ですが、細かいことはあまり気にしなくて大丈夫です。ご自分がやりやすい方法で進めてください(アレンジもOK)。とにかく、毎日継続することを第一に考えましょう。

最初の3か月は、文法の問題集はまだやらなくても良いと私は思います(あとで大量にやります)。ただ、英文の仕組みについて少しでもイメージをつかんでおきたい方は、上記の本がおススメです。難しい説明を極力排除した、文法の説明書になっています。

発音学習は最初にやっておくと、学習効率が飛躍的に高まる

学習の最初期に発音学習をやることを、多くの先生や上級者の方が勧めています。その理由は明確で、正しい発音を知っていると、英語学習全体の効率が非常に良くなります。瞬間英作文もテンポよく出来るようになりますし、単語学習や音読、そしてリスニングの上達にも大きく関わってくるので、発音学習はとても大切です。

そこで、elsa speak(エルザスピーク)というスマホアプリを使って、発音学習をすることをおススメします。このアプリでは、AIが学習者の発音を判定してくれます。ですので、独学者でも効率よく発音学習をすることが出来ます。

私の場合は、学習初期にこのアプリが無かったので、書籍とCD音源を使って学習をするしかありませんでした。これだと、自分が正しい発音をしているのか、確認のしようがありません。上達の実感を得られない上、ストレスも溜まるので、私は発音学習を一度断念しました(後で再開した)。結果として、英語学習の効率非常に悪くなりました。

しかし、今から学習を始める方は、このアプリを使うことが出来ます。まずは基礎の発音を繰り返し練習してください。発音記号も併せて覚えることが出来ますので、それ以降の学習に非常に役立つはずです。アプリ内で、ネイティブの先生の解説動画も参照できますが、難しい発音に出会ったら、ネットやYOUTUBEで調べるのがおススメです。経験上、その方が解決策が見つかりやすいです。

このアプリでは、発音の正確さが、パーセンテージで表示されます。アプリ上では80%が合格のラインなのですが、初めのうちは60%~70%ぐらいを目指す感じでやると、ちょうど良いと思います。発音の正確さにこだわりすぎると、ストレスが溜まるので気を付けて下さい。また、学習初期は特に、英語の発声で喉を傷めやすいので、練習のやり過ぎにはご注意ください。

単語学習をペースメーカーにして学習を継続しよう

実は、完全マップでは単語学習は後回しにされています。確かに、初心者は文法学習や発音を優先すべきだと私も思います。ただ、単語学習は勉強のペースを作るのに非常に適しているので、私は初心者の方にもおススメしたいです。単語学習のメリットについては、以前細かく書いたので、よろしければご覧ください。

初心者の内は、あくまでも勉強のペースを作ることを目的として、単語学習をやるのが良いと思います。ですので、いきなりTOEIC用の単語集に取り掛かるのではなく、学生時代の復習もかねて中学校レベルから始めた方が良いと思います。

ちなみに私は眼精疲労が酷いので、紙の単語帳を作って暗記しています(デメリットが多い)。ただ、そのような問題がなければ、単語学習用のアプリを利用すると時間の節約になります。

上記のターゲットシリーズはかなりおススメです(無料・有料版あり)。このシリーズはレベル別に1200・1500・1900に分かれています。ターゲット1200は中学生レベルからの勉強になりますが、英語学習をゼロからやる場合は、ちょうど良いはずです。

また、単語を覚える時は、発音も同時に学ぶようにして下さい(発声しながら暗記するのがオススメ)。中学英語の単語だとしても、正しい発音をしようとするとかなり苦労するはずです。スマホアプリを使えば音声を簡単に参照できるので、上手く利用しましょう。

他にも、上記のような単語学習用のアプリはたくさんあります。お気に入りを探してみるのもよいでしょう。現段階では、無料のコンテンツをやるだけでも、全く問題はないと思います。とにかく毎日アプリを起動して、継続して学習することを目指しましょう。

隙間時間をみつけて、リスニングの聞き流しをする(ただし注意点アリ)

毎日1時間勉強する事簡単ではありません。習慣化するまでに非常に苦労を伴います。ただ、出来れば少しだけでも、学習時間を増やしたいところです。今回、学習の効率やスピードはあまり優先していませんが、目標に速く到達できれば、それに越したことはありません。というわけで、隙間時間を活用して、リスニングの勉強をおススメしたいと思います。

例えば、家事をしながらリスニングの勉強が出来れば、学習の効率をかなり上げる事が出来ます。今回は聞き流しなので、100%、音に集中出来なくても大丈夫です。英語の音に耳が慣れるまではかなり時間がかかりますので、BGM代わりに英語の音声を聞くような環境を整えたいところです。ただその場合、注意しなければならないポイントがあります。それは、

元の英文を読み込んで、文法と単語の意味を完全に理解している文章を、繰り返し聞く

という点です。特に学習の初期段階では、文章の意味が分からない英語音声を聞いても、まったく勉強になりません。よくある通信販売の「ただ聞いているだけで、英語が分かるようになった!」という勉強方法と同じになってしまいます。

初期段階では、元の英文が出来るだけ簡単な物を用意します。中学校1年生用のリスニング音源が手に入れば理想的です。例えば私が使ったのは、

有名な上記の本です。ただ、教材にはそこまでこだわる必要はありません。中学1年生レベルの英語の教材と音源が手に入るなら、なんでもOKです。有名どころだと他にも、

などがあります。

音読は効果的だが、まずは英語の音声に慣れる事を優先する

ちなみに私は完全マップに従って学習を開始したので、

上記の本を使って学習初期に音読を始めたのですが、難しすぎて学習のストレスが半端では無かったです。この本は、初心者向けと書かれている物の、結構レベルが高いです。全く聞き取れないし、聞いたものを反復(リピーティング)するなんてさらに無理、という感じが続いて、かなり辛い思いをしました(おすすめしません)。

音読はかなり効果がありますし、この先必ずやる事になります。ただその前に、英語の音声に耳を慣らす作業を、徹底的にやる事をおすすめします。同じリスニングの音声を、うんざりするほど繰り返し聞いてみましょう。聞き流すだけならば、学習のストレスもそれほどたまりません。

ただし注意しなければならないのは、先ほども触れましたが、意味の分かっている文章を聞く、という点です。この段階では、中学生向けの教材だとしても、細部まで聞き取って意味を理解するのがなかなか難しいはずです。単語や文法の理解が足りないと感じる事もあると思います。ただ、現段階でそれは全く問題がありません(だいたいの理解で良い)。

聞き流しで目指すのは、音声と意味を頭の中で一致させること

ここでの最終的な目標は、流れている音の位置と話の内容が、頭の中で完全に一致することです。「今、あのページのあの部分が流れているな(音の位置)」という事を把握つつ「あの部分で話されていたのは、ああいう意味だったな(話の内容)」という事を思い出すようにします。すると、英語の音とその内容が、頭の中で徐々に重なっていきます時間はかなりかかる)。

音声の細かい部分は、恐らく、この段階では聞き取れるようにはなりません。ただし、頭の中には確実に、英語の音に対する経験値が溜まっていきます。最初の3か月は、その経験値をひたすらためるだけでOKです。のちに音読を開始する時に、その経験値が役立ってくれます

ただし、何度も同じ音を聞くこの作業は、結構つまらないです。苦行に感じる方もいると思います。ストレスを貯め過ぎないように気を付けて下さい。ただ、これを機械的に毎日続けることが出来るかが勝負の分かれ目とも言えます。是非頑張ってください。努力は報われます

今は何も迷う必要はなく、ただひたすら続けましょう

以上のように、最初の3か月は瞬間英作文・発音・単語学習にフォーカスして勉強する事をおすすめします。加えて、隙間時間でリスニングが出来ると理想的です。今回ご紹介した学習方法以外に、音読や多読など、有効な学習方法はたくさんあります。ですが、この段階では、方法について迷う必要は全くありません。それよりも、学習を継続することに意識を集中しましょう。

何度も言って申し訳ないですが、学習の習慣化が本当に大切です。そのために今回は、なるべくシンプルで、ストレスを貯めにくい学習スタイルをご提案しました。友人の奥様がこのスタイルで、3か月の壁を乗り越えてくれることを願っています。

3か月学習を続けることが出来たら、挫折の可能性をかなり減らすことができます。次は1年の継続を目指して学習を続けましょう。というわけで次回は、一応このシリーズの最終回として、学習3か月から1年目、そしてTOEIC600点までの学習計画の、おおまかなイメージをご紹介したいと思います。