ChatGPTを利用した英会話アプリ「speak」を一か月(毎日20分)使った現時点でのレビュー

試験目的ならば、オンライン英会話の代わりに十分使える

スピーキングの練習のために、私はChatGPTを利用した「speak」というアプリを使っています。前回のレビューでは、「speak」と「Hachi」の違いについて解説をしました(両方ともChatGPTを利用している英会話アプリ)。利用料金やおおまかな印象については、そちらを見て頂ければと思います。

では、約一か月「speak」を使ってみてどうだったのか、はじめに短くまとめると、

英検1級の面接対策に使うならば、オンライン英会話の代わりとして十分に使える。アプリを使った学習には、メリットが多い。ただし、不満に感じる点もいくつかある。AIはスピーキングのハードルを下げてくれている。そしてまだ、発展の余地がかなりあるはず。

と言う感じになりました。

英検1級の面接で使う英語には、ある程度パターンがある

上で「英検1級の面接対策に使うならば」と強調したのには理由があります。英検には試験範囲があるので、ある程度対策が可能です。2次試験のスピーキングに関しても、ある程度の型を身に付ければ点数が取りやすくなります。繰り返し似たような会話を練習すると、効果的に対策をする事ができます。

例えば「環境問題・世界平和・教育・科学」は英検で良く出てくるテーマです。そこで出てくる単語や表現を重点的に学ぶことが、合格への近道になります。ですので、私は「speak」を使って、繰り返し似たようなテーマで、スピーキングの練習をしています(たまに野球とか旅行の話もします)。

例えば「環境問題」について繰り返し話していると「汚染=pollution」とか「地球温暖化=global warming」のような言葉が、頭に定着します。また、それらの単語を使った表現や、良く使う文法事項も覚えるので、応用力が徐々に上がっていきます。話の展開の仕方も、繰り返していくうちに自分の型が出来てくるはずです。

この「繰り返し同じ話をする練習」を、以前私は、オンライン英会話でやっていました(英検1級対策として)。しかし「speak」でも、十分に同じことが出来そうだという感触を得ています。

もちろんこのアプリを、英検対策以外の目的で使う方もたくさんいると思います。その場合でも、この「繰り返し同じ話をする練習」はおすすめです。特にスピーキングに慣れていないうちは、同じ単語・表現を繰り返すことによって、会話のパターンが身に付いて行きます。その後、それらを組み合わせることによって、複雑な会話も出来るようになるはずです。

実際にアプリを使っている時の様子(自由にテーマを設定できる)

「speak」でAIの先生と会話をする場合、あらかじめ用意されているトピックから選ぶこともできますし、自由に状況を設定することもできます。用意されているトピックの中には「公害問題」や「ジェネレーションギャップ」等があるので、これらを選んで「英検1級の2次試験対策」に使うのもアリです。

また、自由に状況を設定したい場合は、以下のような画面で入力をします。

「自分の役」「AIの役」「テーマ」は自由に入力する事ができます。私はここで自分の役を「英検1級の受験者」としていますが、これを入力したからといって、会話の内容が英検1級っぽくなるわけではありません。一応、自由に入力が出来るというだけで、まだそこまでの機能は無いようです(将来的には対応しそうだが)。細部はあまり考慮されず、おおまかに「ある試験の受験者が、面接官と上記のテーマで討論をする」ぐらいの内容になります。

そして、受け答えが終わると以下の画面になります。

「speak」では契約しているプランによって、「クレジット」を受け取る事ができます。「クレジット」とは「AIが使った単語の数」です。ということで、結果画面で「使った単語数」が表示されるようになっているのだと思います。

私の現在のプランは、月額約2500円で10000単語使える契約です。仮に600単語×30日だと18000語になってしまうので、月の途中でサービスが使えなくなってしまいます。消費する単語数を考えて、もう少し短い会話にすべきかもしれません。もしくは、クレジットが無くなった段階で、「Hachi」を補足的に使おうかと検討しています。ただ、会話が長くなってしまったのは「speak」の仕様とも関係があります。

最初から用意されているテーマを使えば、250単語ぐらいを消費したところでAIが「今日は会話出来て楽しかったです、良い日を!」などと言って、話を切り上げてきます。一方で、今回のような自由設定の会話をすると、なぜか500以上の単語を消費しないと、AIが話を切り上げようとしません。

ですので、短く終わらせたいならば「そろそろ会話を終わりにしましょう」とこちらから言う必要があります(AI相手なのでブツ切りでも構わない)。実際の面接で、これをやったら絶対に合格しないとは思いますが。

「speak」の利点は、すべての発言に修正案を出してくれる所

上の画面の続きになりますが、学習者の発言内容に修正点があった場合は、会話終了後にアプリがより良い文章を提案してくれます。すべての発言をチェックしてくれるので、これが本当に良い復習になります。

この部分は「speak」のかなり良い点だと思います。会話の後に、私は修正された文章を必ず音読するようにしています。会話の内容は保存されるので、あとで読み返すことも出来ますし、個別の発言にしおりを付けることも可能です(その部分だけストックして読み返せる)。

類似するアプリである「Hachi」にも、文法チェックの機能はあります。ただ、会話の途中でチェックをリクエストをする必要があり、しかもリクエスト直前の発言しかチェックの対象になりません。この部分で「Hachi」は「speak」よりやや性能が劣る感じです。

具体的な会話の内容を一部ご紹介します

今回のテーマは「状況においては発言の自由は制限されるべきか」にしています。このようなテーマは英検1級で出やすいです(権利と制限)。

実際のAIとの会話は、以下の感じで進みました(読みやすいように簡略化しています)。

AI先生:このトピックに関して、あなたはどんな意見を持っていますか?

:最近は誰でもネットで自由に発言できますが、そのせいで傷つく人も増えています。

AI先生:人が傷つけられる事を防ぐために、発言の自由を制限すべき他の例を挙げて下さい。

:自分の意見を上手く伝えられない人が一定数います。ですので、衝突が起こることがあり、そのためにある程度の制限は必要です。

AI先生:オンライン以外の場所で、発言の自由を制限すべき状況はありますか?

:伝染病が流行ったときに、ワクチンの有効性に対して誤った情報を流す人がいました。そのような場合、デマが広がる事を防ぐ必要があります。

AI先生:ワクチンについて人が語る場合、どのような制限が必要になりますか?

:科学的情報を持った専門家以外は、発言が制限されるべき状況があるはずです。そうでないと、人命が失われる可能性があります。

AI先生:健康と安全に関しては、確かに正しい情報が重要になります。人々を守る事と、発言の自由を守ることを、両立する方法は何でしょうか。

これで、全体の会話の4分の1ぐらいです。英検1級の面接そのものでは無いですが、出だしはなかなか、それっぽい受け答えになっていると思います。

もしこれが本当の英検の試験ならば、受験者は賛成か反対か、の立場を守って話を進めるのが有効な作戦です(あいまいな立場だと主張がしにくいので)。試験官の方はそれに対して、質問をしたり、反論を試みる展開になるはずです。

今回私は「言論を規制した方が良い」という主張を続けようとしたのですが、AI先生はあまり私の主張に興味を持ってくれませんでした。それよりも「言論の自由と規制のバランスを取るにはどうすればよいのか」に関して、何度もこちらに質問をしてきました(かなりしつこく)。

そのような感じで、会話が長くなると、AI先生の挙動が怪しくなってくるケースもあります。これはChatGPT全般に言える問題かもしれません(似たような例をよく見聞きするので)。

「speak」の問題点と良い点を箇条書きにする

問題点を箇条書きにすると、

同じ質問を繰り返す

話のテーマを忘れてズレた質問をしてくる

AI先生の意見に反論しても、先生が全く意見を変えない(頑固者)

学習者がネガティブな意見を出すと、AI先生がポジティブな方向に誘導しようとする(楽観主義)

会話の流れがワンパターン(変化球はほぼ無い)

会話の詳細を学習者がカスタマイズ出来ない(先生の発言の長さ等)

※カスタマイズに関しては、「アプリにお任せモード」と「自分で細かく設定モード」の両方が欲しい。

上記が、私が特に気になっている点です。ただ、勉強目的で使う分には、そこまで大きな問題にはならないと思います。また今後、アプリの進化と共に問題点は改善されていくはずです。

一方で、現状で感じる「speak」の良い点を箇条書きにします。

オンライン英会話よりもお金がかからない

時間と場所を選ばずスピーキングの学習が出来る

こちらの拙い発音をしっかり聞き取ってくれる

文章の修正例を出してくれるので復習しやすい

先生に気を遣わなくてよいので気が楽

会話の途中で先生を放置して、自由に調べ物が出来る(単語を調べたり、文章の構成を考えたり出来る)

最低限の会話が出来て、コストがあまりかからない、と言うのは大きいです。生身の人間相手だと緊張してしまう方も多いと思いますが、その点もアプリなら気にする必要がありません。「いいことだらけ」だと思います。

それほど複雑な会話でなければ、AIとの練習は効率が良い

オンライン英会話(人間)に勝てない部分もまだ多いが

もっと難しい英語の試験の対策をするならば、より深い議論や討論のような事をする必要があるでしょう。試験官からの、変化球のような質問に対応する練習も必要かもしれません。その場合は「speak」ではなく「優秀な先生とのオンライン英会話」が必要になるはずです。

また、日常会話全般を広く学びたい場合(臨機応変な雑談など)「決まった試験範囲(会話の範囲)」はもちろんありません。ですので、より人間らしいコミュニケーションを学びたいと思うならば、現状ではまだ、オンライン英会話のほうが優れている印象です

AIがスピーキングのハードルを下げてくれている

日本で英語を勉強している場合、日常的に英語を使う機会がなかなか得られない人が多いはずです。その結果、試験の難易度はそれほど高くなくても、スピーキングのテストで苦労をする人が多いのだと思います。

実際に私も、TOEIC中心の勉強をずっとしていたので、スピーキングとライティングはほとんど手を付けていませんでした。英検1級を受けるために、学習7年目の半ばで、ようやくオンライン英会話を始めて、結構ストレスをためながら勉強をしていました。

それが、AIを使った英会話アプリの出現で、状況が変わったと思います。学習者にとってのスピーキングのハードルが、一気に下がったはずです。私もまだ1か月しかやっていないので、まだ決定的な事は言えません。ただ、elsa speak(発音学習アプリ)と同じように、1年も続ければ、かなりの成果をもたらしてくれるような気がしています。

AIの性能は今後、飛躍的に上がっていくはずです。ですので、毎回同じような事を言っていますが、英語学習をAIがよりよい方向に変えてくれると思います。私はかなり楽しみにしています。「speak」については、今後も一定期間ごとにレビューをする予定です。また、他に良さそうなアプリがあった場合にも、それを試してレビューをしたいと思っています。