中古で安く手に入る過去の「特急シリーズ」は、今でも使えるのか
TOEICの問題集「特急シリーズ」はご存じの方も多いと思います。片手で持てるぐらいの、サイズの小ささが特徴のシリーズです。通勤電車の中でも使えるように、というコンセプトなのかもしれません。私は自宅での座学が中心で、本の小ささを必要としていないこともあり、今までこのシリーズにほとんど触れてきませんでした。
ただし、part5の難問対策で以下の本を利用したことはあります。かなり良い本です。
あとは有名な「金のフレーズ」も使いました。単語の厳選が素晴らしくて、非常に有用な本です。
「特急シリーズ」の値段は手ごろなのですが、小さな本ですので、ボリュームはそれほどありません。ですので、定価は安いのですがあまりコスパが良いとは言えません。
ただ、少し古い本だと、アマゾンやフリマでかなり安く手に入れる事ができます。加えて「特急シリーズ」はアマゾンのレビューで評価が高い物が多いので、質の良さも期待できます(レビューを鵜呑みには出来ないけど)。もし、内容的に現在のTOEICとそれほど差がなければ、お得に使える可能性があります。
ということで、中古で安く手に入る「特急シリーズ」を、片っ端からやってみる事にしました。2023年4月現在のTOEICと比較して、今でも使えるのかどうかを検証したいと思います。今回はその第一回として「TOEIC L&R TEST 読解特急5 ダブルパッセージ編」をやったので、レビューを致します。
結論を先に短く述べると、
現在のTOEICのpart7と、内容的にほとんど差を感じなかった。問題の質も良いので十分今でも使える。
という感じになりました。
よく見たら、2013年発行の本を改題した物だった
本の端書を眺めていて気付いたのですが、この本は2013年に発行された本を改題して、2018年に再び売り出した物のようです。変更点に関して特に表記がないので、内容的には恐らく、2013年の物と違いが無いのだと思います。
この手の売り方は、TOEICの問題集や模試でよく見かけるケースです。TOEIC本家の仕様がマイナーチェンジされたタイミングで、過去の問題集もそれに合わせて「新形式対応版」として「新発売」されています。
改訂が必要無かったのならば、2013年の本でも問題は無いはず
TOEICが新形式になった時に、改訂が必要になる本と、そうでない本があるようですが、この本は改訂が必要無かったようです。実際、私はこの本の問題を解いてみて、現在(2023年)のTOEIC本番の、ダブルパッセージの問題(二つの文書を見比べて答える問題)とほとんど違いを感じませんでした。
つまり、part7で出てくるダブルパッセージの問題は、作りが10年以上変わっていない、という事です。「ダブルパッセージの問題」という形式が同じなので、問題の作り方にも、変更の余地はそれほど無いのかもしれません。
学習者にとってみれば、昔の本でも十分使える事が分かったので、これはメリットと考えて良いと思います。恐らく他の「古い特急シリーズ」も、少なくともリーディングパートの本に関しては、今でも使えるのではないか、という期待が持てます。
ちなみに私は、この本の中古「状態:良」を、アマゾンで480円で手に入れました(送料込み)。2013年発行の物(改題前の本)も恐らく内容が同じなので、そちらを選べばもう少し安く買えると思います。
時間を計りながら解くと、TOEIC本番の良い練習になる
内容に関してですが、問題の質はとても良いです。著者がTOEIC界では有名なお二人ですし、期待通りの内容でした。
この本にはダブルパッセージの問題が20問含まれています。各問題に対して、設問が5つあります(つまり合計100問)。難易度はそこまで高くなくて、現在のTOEICに照らし合わせて考えても、平均的な難易度だと思います。
参考までに、私はこの本でのミスは全体を通して一つでした(得点率にすると99%)。最近のTOEICのpart7は難化傾向にあるので、それと比べるとやや易しい、という認識になるかもしれません。ただ、時間制限を考えてやるならば、それなりに難しさを感じるはずです。
上級者は5分以内で解くようにすると、良い訓練になる
著者の方が本文中で「上級者は時間を計って、一問(設問としては5問)を5分で解く事を目指してください」とおっしゃっています。実際に私も、時間を計って最後まで解いたのですが、5分の制限時間内に解こうとすると、かなりギリギリでした。早くても4分後半ぐらいで、6分ぐらいかかってしまう問題もありました。
私は最近、TOEICのリーディングパートで時間配分に苦労をしています。ただ、直近のテスト(4月23日の回)では、かなり時間を意識してハイスピードで解きました。結果として10分近く時間を余すことが出来ました。これはかなり上手く行ったケースですが、ほとんど迷いなく、テンポよくすべての問題を解くと、これぐらい時間が余ります(現在の私の場合)。
この「ほとんど迷いなく解いていく」感覚が、この本でいう「1問を5分以内に解き終わる」感覚に非常に近いと感じました。つまり、この本の問題をすべて5分以内に解く事が出来るならば、本番でも時間をかなり余すことが出来るはずです。逆に、5分以内に解ける問題が少ないならば、本番で時間に追われることになりそうです。
これがつまり、この本の問題の質の良さを表していると思います。文章量と問題の難易度が適切なので、本番のリーディングパートを解いているときの感覚に、かなり近い経験をすることができます。実際のpart7ではダブルパッセージ以外の問題もあるわけですが、「5分でダブルパッセージを解く」という事は、一つの基準になると思います。
素直な問題が多いので、上級者以外にもおススメ出来る
初中級者の方がこの本に取り組む場合は、時間にはとらわれずに、文章を正確に読み解くことに集中すべきだと思います。先ほども述べましたが、難易度は高くありません。ひっかけ問題のような物や、意地悪な選択肢もありません。ですので、勉強をしていてストレスが溜まりにくいと思います(結構重要な要素)。
この本の問題は難易度が本当に程よいです(公式問題集にも近い)。もしこの本で、文法的に分からない部分があったり、単語の意味が分からない物が多かった場合は、その項目を重点的に勉強すると、学習の効率が良くなると思います。TOEICのリーディングにおいて、単語力が足りないのか、文法力が足りないのか、初中級者の方はこの本で、そのような見極めも出来ると思います。
古い本でも使えるものはたくさんある、という予感がした
「新形式対応」とか「最新版」という言葉に、私もつい惹かれます。「新しい」という売り文句があった方が、出版社は本が売りやすいかもしれません。ただ英語学習の中身は、短期間でそれほど変わる事は無いはずです。ですので、例えTOEICの形式が多少変わったとしても、地道に勉強をしていれば点数は取れると思います。
ちなみにTOEICの公式問題集に関しても、古い物が十分使えるという事を私は最近経験しました。
もちろん、新しい本を買う事は悪い事ではありません。新刊の本で勉強するのは気持ちの良い物です(モチベーションも上がる)。逆に「状態:非常に良い」の中古を買ったのに書き込みだらけだった、という経験を私は何度かしています(結構ストレスが溜まる)。
ただ、コスパを優先して考える方にとっては、「特急シリーズ」の古い本はねらい目かもしれません。今後もシリーズの他の本をやってみて、レビューをする予定です。