2023年に「TOEICテスト必勝ダブル模試」をやったのでレビューをします

ポップな外見に似合わず、かなり難易度が高いので注意が必要

前回、大里秀介先生による「TOEICテスト新形式完全攻略模試」をやって、レビューをしました。

今回はその続編とも言える「TOEICテスト必勝ダブル模試」をやったのでレビューをしたいと思います。

以前、TOEICの問題集として有名な「特急シリーズ」の中で、part6のみを扱ったちょっと珍しい本に出会い、その内容がかなり良くて印象に残りました。

そこで、この本の著者である大里先生が作った模試もやってみることにしました。前回やった「TOEICテスト新形式完全攻略模試」は2016年発行の本で、今回レビューする「TOEICテスト必勝ダブル模試」は2017年発行の本です。それぞれ発行年は古いのですが、それは特に問題にならないと思います。

ただ、この2冊に共通している注意点があって、それは難易度がかなり高いという事です。2冊とも装丁がお洒落で、解説ページでは大里先生の姿がイラストで描かれていて柔らかい雰囲気があります。ですので、パッと見では、難易度が高くなさそうな印象を受けるかもしれません。ただ、中身は驚きの高難易度でした。

具体的にどう難しいか述べる前に、結論を先に書きます。

リスニングは音の短縮・消失等があり、聞き取り辛い物が多い。リーディングのpart5・6は質の良い問題が多いが、こちらも難易度が高い。part7はあいまいな選択肢と言葉の言い換えが多く、正解が選びにくい。よって、初~中級者には全くおすすめ出来ない。

900点以上の方が高地トレーニングとして使う場合は、有効活用できるはず。ただし本番とはだいぶテイストが異なるので、実践練習というより、あくまでもトレーニングの素材として使うのがおすすめ。

という感じになりました。

本の外側に難易度の表記は無いので、標準的なレベルの模試だと思って購入する方が多いかもしれません。ですが、私が今までやった模試の中でも、かなり難易度の高い部類に入ります。この本を初~中級者の方がやった場合、本番よりもかなり低い点数が出るはずです。

アマゾンのレビューでは高評価ですが、万人に勧められる内容では無いと思います。高評価の本でも、初中級者の方にとっては使いにくい物もあるので注意が必要です。一方で、TOEIC関連で高地トレーニングの素材を求めている方には、やりがいのある内容になっていると思います。

本番を想定して作られた模試のはずだが、過去最高レベルの難易度だった

まず、私のスコアをご紹介します。この「TOEICテスト必勝ダブル模試」には模試が2つ含まれています。

TEST1

リスニング  94/100 part2:2ミス part3:2ミス part4:2ミス 計6ミス

リーディング 92/100 part5:1ミス part7:7ミス 計8ミス

TEST2

リスニング  92/100 part1:1ミス part2:2ミス part3:3ミス part4:2ミス 計8ミス

リーディング 91/100 part5:4ミス part6:1ミス part7:4ミス 計9ミス

私はTOEICの模試を結構やってきていますが、ここまでミスが多かったものは、最近ではあまりありません。難易度的に近い物は「TOEIC L&Rテスト990点攻略」になります。

上記の本は、「TOEICで満点を取る」という事が明確にコンセプトとして示されている本です。ですので、難易度が高くても納得が行きました。ただ、今回の本は「最新傾向を凝縮し、『リアル』を体験できる一冊」という売り文句になっています。つまり、本試験を想定して作られているようです。ただ、難易度的にあまり「リアル」ではないと私は感じました。

私が過去にやった模試でも、「本番を想定して作っている」という売り文句なのに、難易度がかなり高い模試は結構ありました。ですので、これは珍しい事ではないと思います。TOEICの模試の難易度調整は、かなり難しい事のようです。

ですので、特に初~中級の学習者の方は、模試を購入する前にその難易度をよく調べる事をおすすめします。本の帯や売り文句だけで判断するのはやや危険です。アマゾンのレビューも、難易度を知る用途にはあまり向いていません。出来れば、個人ブログの長文レビューを比較しつつ見るのが良いです(手前味噌)。

ちなみに、公式問題集と同じぐらいの難易度で、解説が詳しい模試としては以下の2冊がオススメです。本試験より難しい市販の模試が多い中で、この2冊は貴重な存在だと思います。

リスニングの解説は、すべて聞き取れている前提で書かれている

今回の「TOEICテスト必勝ダブル模試」の内容について、まずはリスニングですが、音の短縮・消失が結構多いので聞き取り辛いです。ですが、解説ではその音の短縮・消失に関する言及がほとんどありません。すべてが聞き取れている前提で、解説が書かれています。

ただこれは、特別不親切という訳ではありません。「聞き取れている前提」で解説が書かれている模試は多いです。公式問題集でも、聞き取りが難しい音源に対して、そこをフォローするような解説は見たことがありません(残念なことに)。

逆に「音の短縮・消失」に対して、ものすごく細かく解説している模試があります(1冊目は上で紹介している物と同じです)。

機会があれば是非一度、本屋さんで中をみて頂きたいのですが、リスニングの聞き取り辛い部分を一部カタカナで表記していたりと、かなり工夫がされています。例えば、

I willの短縮のI’llが「アイゥ」と聞こえる

のような説明があり、このような解説は、特に初中級者の方に有益だと思います。

現実問題として初~中級者の方は、リスニング問題で音をすべて聞き取るのは相当難しいはずです。リスニングで400点後半(450点満点中)が取れるようになっても、細部の聞き取りまではなかなか出来ません。ですので、音の変化やイントネーション、短縮、省略などについて、すべての模試でもっと解説があってしかるべきだと私は思います。

ただ、多くの模試がそれを出来ていないのは、恐らく、かなりの手間とコストがかかるからだと思います。著者の方がリスニングの分野に、かなり詳しい必要もあるはずです。

ちょっと脱線しましたが、「TOEICテスト必勝ダブル模試」のリスニング問題は、解説の量が多くて丁寧なだけに、音の変化にも言及して欲しかったと感じました。

ただ、高地トレーニングの素材としては十分有用だと思います。実際に私も、音の細部を聞き取ることに重点を置いて勉強をしていますので、やりがいのある問題が多いと感じました。解答の選択肢も紛らわしい物が結構あるのですが、高地トレーニング向けと考えれば、良い経験値になるはずです。

part5の難問は質が高いが、part7はすっきりしない問題が多い

リーディングに関してですが、part5と6は問題の質がとても良かったです。特にpart5で私はたくさんミスをしてしまったのですが、自分の文法の穴を見つけられたので、非常に有用に感じました。前回の「TOEICテスト新形式完全攻略模試」でも、part5と6は問題の質が高かったので、大里先生の得意分野なのだろう、と感じました。

ただしpart7は、TOEIC本番と比べて、難易度も内容もだいぶ違いがあると感じました。英文の意味がしっかりと取れていても、解答の選択肢の表現があいまいで、迷ってしまう問題が多かったです。その結果、深読みをしすぎて間違ってしまった物もありました。

一方でTOEIC本試験のpart7では、基本的には答えが選びやすい問題が出てきます。それらの問題を立ち止まることなく、スイスイ解いて行く感覚が大切になります。英文を読んでしっかり意味が取れたならば、選択肢で悩むような事はほとんどないはずです。

ということで、この模試のpart7に関して言うと「本番のリアルを体験する」事は出来ない印象でした。むしろリスニングパートと同じように、高地トレーニング向けの素材としては良いと思います。本試験でも悩ませる問題は出てくることがあるので、そこを集中的に練習できることは、特に高得点を目指している方には有難いはずです。

TOEICの模試は、意図せず難しくなってしまいがち

特に初中級者の方がTOEICの模試を選ぶとき、その難易度を知っている事は重要です。ただ、市販の模試には、難易度がハッキリと記されていない物も多いです。その場合、多くの人がその模試を、本番の試験と同じくらいの、標準的なレベルの模試だと考えると思います。

ですが実際には、今回の模試のように、難易度がかなり高い物も含まれています。そして著者の方も、アマゾンにレビューを投稿している方も、その難易度の高さに気付いていない様に見えるケースがあります。なぜこのことが起こるのか不思議ですが、ここをあまり掘り下げても意味は無いかもしれません。

ただ、初中級者の方が難しすぎる模試をやってしまうと、モチベーションが下がってしまう事が多いはずです。難易度が高いと、解説を読んでもミスの理由が分からないようなこともあると思います。それは避けたいところです。

私は現在、TOEIC満点を目指していますので、「高地トレーニング向け」の模試は大歓迎です。今回の模試のレビューは、割と批判的な内容になってしまいましたが、学習の素材としては良く出来ています。問題なのは「普通レベルの模試に見えるけど、実はかなり難しい」という点だけです。

今後もTOEICの模試をレビューしていこうと思っていますが、難易度の問題には注目して行こうと思っています。上級者の方には、高地トレーニング向けの素材をご紹介する事にもなりますし、初中級者の方には、模試のレベルを知る情報源になれればと思います。